【土・日曜日に書く】論説委員・石川水穂 GHQ焚書の一端明るみに
戦後、GHQ(連合国軍総司令部)が戦前・戦中の日本の書物を没収した「焚書(ふんしょ)」に日本の著名な3人の学者がかかわっていたことが、評論家の西尾幹二氏の研究で明らかになり、今月17日に発売された西尾氏の著書「GHQ焚書図書開封」(徳間書店)にその研究結果が詳しく書かれている。
西尾氏はこれらの文献から、次のように推定した。
まず、GHQから政府を通して東大に協力要請があり、文学部に委員会が設けられた後、金子、尾高の2人の助教授が指名された。2人はやがて帝国図書館に呼ばれ、専門委員として、出版物追放のための小委員会に加わった。小委員会での結論を受け、牧野氏が首相官邸での本委員会で没収の決裁を行っていたのではないか。
「焚書」とは別に、GHQが行った新聞や雑誌に対する「検閲」の実態は、江藤淳氏の「閉された言語空間」(平成元年、文芸春秋刊)で明らかにされた。