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去りゆく学生に感じた才気

しかし、Y君は強すぎて世の中の厳しさを知っていなかった。こんな学生は徹底的にイジメて大きく育てなければならない。

 Y君のように才気が先走るような学生は、ごくたまにいる。私は、「君の考えは間違っている。まず勉強してから、もう一度来なさい」という言葉を何度も彼に投げかけた。

「私たちは創造的な仕事をしようと心がけています。思うこと、自分で考えることは一番大切です。でも、先人が成し遂げたことはしっかり学ばなければ、それを超えたかどうかも分かりません。“学ぶ”ことと“自分で思う”ことのバランスは極めて大切です」。

 「どう、分かってきた?」と言った私に、Y君は答えた。「分かりましたよ。結局これなんですね」。

それを本当に理解させることは難しい。研究を進めるほど、細かいソリューションの世界にのめり込んでしまうことが多いからだ。

 だから正直言って、彼の発言にはびっくりした。アーキテクト、つまり全体構造を設計できる人になる素養があるのだ。

 経営力の中で一番大切なのは、未来を予測する想像力と全体構造を理解するアーキテクチュラルな力だ。

教育は一番創造的な仕事だと思う。人を育てることほど創造的なことはない。

 今上陛下が幼少の頃、「好きな言葉は何ですか?」と聞かれて、「『忠恕』です。」と答えられたことがある。「忠」とはする心、「恕」とは女の領域の心で、人を育み育てるまごころの徳を意味する。
 「夫子の道は忠恕のみ。」というから、論語全編に貫かれているのもこの思想ということになる。言い換えれば「仁」であり、仏教なら「慈悲」、キリスト教なら「愛」に相当する。「大きく育て」ようとすれば「徹底的にイジメ」る必要があるから、「悲」の字が付いており、「愛(かな)」しと訓む。孟子に「天の将に是の人に大任を降さんとするや、必ず先ず其の心志を苦しめ、其の筋骨を労せしめ、其の体膚を餓せしめ、其の身行を空乏せしめ、其の為さんとする所を拂乱せしむ。」とあるのもこのことです。
 凡そ、大宇宙を成り立たせているものを「道」といい、これが小宇宙たる人に発したものを「徳」という。そして、大宇宙の本質は「造化」にあるから、人にあっても「仁」が最も大切だということになる。従って、「人を育てることほど創造的なことはない。」のであります。
 してみれば、陛下のお名前に「仁」の字が付いている理由も自ずからわかると思います。
 教育法について言えば、漢学では「四部の学」といって、「経史子集」を学ぶことによって抽象・具象を一緒に理解できるようになっている。そして、我々は見ているものを日本語で、外人は外国語で表現しているから、対話法を用いることによって、「それが何を示しているのか」を理解させ易いと思う。