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去りゆく大蔵官僚

 ここで武藤氏の人事に深く絡むことになるある人物が登場する。当時、法務省官房長の要職にあった但木敬一氏である。現在検事総長である但木氏は、武藤氏の開成中学以来の幼馴染なのである。

 この事件で大蔵省でも10年に1人の大物と言われた杉井孝氏も辞職に追い込まれる。旧三和銀行との官僚の則を越えたつき合いが明らかとなったからだった。しかし、それは大蔵内部からのリークであった。

 「武藤だけは許せない」
 杉井氏がことあるごとに口にしていた言葉は何を意味するのか。
 「武藤は検察の力を借りて事務次官を手に入れた」と言われるゆえんだ。

 この時、村上ファンド事件を捜査していた東京地検特捜部は壮大な構図を描いていた。
 つまり、小泉政権で行われた構造改革を国家黙認のインサイダーと認定し、その考えに沿って捜査を行っていた。

 特捜部はまさに国家ぐるみのインサイダー事件に着手していたのである。万が一、福井氏辞任の場合、総裁への就任を内々に打診されていた武藤氏は即答を避けたようだ。

武藤氏の耳にも「武藤は検察捜査のおかげで事務次官のポストをつかんだ」という揶揄する話は届いていたはずだ。