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コンサルティングファーム特集【冨山和彦氏 特別インタビュー】

本当は、こうした機会をとらえ、企業や業種の壁を越えて、ヒト・モノ・カネの再編成を行うべきだったのだが、それに立ち後れてしまいました。

 したがっていま求められているのは、単なる戦略Aから戦略Bへの移行ではない。従来の日本型企業モデルの再構築なのです。

 What−「何を変えなければならないのか」を言うためには、緻密な現状分析と、厳密な論理構成で、有効な結論を導き出せなければなりません。かなり知力を使う作業で、誰にもできるものではありません。

 ただ、この部分で問われるのは、比較的、デジタルでリニア(連続的)な能力です。科学者が実験の成果を論文にまとめるのとそう変わらない能力とも言えます。優秀な学校を優秀な成績で卒業した人なら、課題さえ与えられれば、きっと容易に解くことができるでしょう。

 1つ目は、業務改革や戦略の目的をどのように実行するかという How の部分、言い換えれば、インプリメンテーション(推進)の能力です。

経験の量

人間に対する観察力、洞察力、そして説得力

いま彼らがコンサルタントに求めるのは、明日からすぐに実行できるプランです。

科学的分析と検証を経た、外部の第三者としての公平で客観的な意見であれば、耳を傾ける人も多くなる。

合理と情理、What と How。そのどちらのフェイズでも秀でた力を発揮できるコンサルタントはまれですが、少なくともその両面に目配りを効かせられるだけの、ふところの深さが、これからのコンサルタントには求められています。

グランドデザインを描くだけでなく、人と人の間に分け入り、ときには自らの手を汚して、インプリメンテーションを遂行する、そこまでの力を身につけたいものです。

なぜこうした幅広い能力が求められているかというと、経営という仕事自体が以前にも増して複雑になっているからです。

常に企業や部門の最高責任者の視点で、自らの業務に取り組むこと。蟻のように働きながら、ときには鳥の視点でものを見る。ミクロな虫の眼とマクロな鳥の眼を切り替えることができる、そうした複眼的思考こそコンサルタントには欠かせないものです。

こういう人たちが一定の層を形成し、さらに彼らがスキル発揮の場を求めて自由に動く流動性がないから、日本の企業は従来のモデルを乗り越えることができない

事業会社の現場を実際に体験してこそ、経営スキルは磨かれるもの。

与えられた課題を単に解くだけでなく、何もないところに自ら課題を設定することが、彼らには求められています。

そうしたマインドを持ちながら仕事をする人と、そうでない人の差は、わずか5年の間でも決定的なものになるはずです。

 将棋でいえば、いまは香車か桂馬か、いずれにしても1つの駒にすぎないかもしれません。しかし、1つの駒としての役割を果たしながら、つねに指し手の戦略・思考を先取りし、盤面の次の展開を見通している−それができて、なおかつそのことに大いなる使命と喜びを感じる人にとって、コンサルタントほど挑戦しがいのある職業はないと思います。