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輸出産業が崩壊した中国と日本、それぞれの危機の本質|野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む|ダイヤモンド・オンライン

 1月22日に発表された貿易統計で、日本の輸出が壊滅的な事態に陥っていることが改めて明らかにされた。

 注目されるのは、対中国輸出が急減していることだ。これは、中国の輸出産業の生産が急激に縮小していることの結果である。

 中国政府が公表する統計データが不十分であるため、中国経済の状況は必ずしも正確にわからないのだが、輸出産業がきわめて深刻な事態に陥っていることは間違いない。

これまで中国の国民は、高い経済成長率で「明日は今日より豊かになる」との期待に支えられて、さまざまな困難に耐えてきた。その期待が裏切られ、それどころか職を失うという事態になれば、社会的な不安が一挙に拡大する危険がある。とくに深刻なのは、高学歴者が職を得られないという事態だ。中国が改革開放以来の深刻な危機に直面していることは間違いない。

実は、日本は従来は外需依存型の経済構造ではなかった。とくに、高度成長期においては、国内で増加する消費や設備投資に支えられて経済が成長した。この点は、日本と中国の大きな違いである。

しかし、02年以降の景気回復は、異常ともいえるほど外需に依存したものであった。その結果、新興国との競合が生じ、賃金がグローバルな水準に引き寄せられる平準化現象が生じた(これは、「要素価格均等化定理」と呼ばれるメカニズムだ)。そのため、景気回復の過程で、企業利潤は増えたものの、賃金は上がらなかった。労働対資本の分配は、かなり変わったのである。

 以上の背景には、金融緩和、円安誘導の経済政策があった。

 仮に内需に依存する産業構造になっていたら、円安誘導はなされなかったろう。円高が進めば、輸入品の円建て価格は低下し、日本の消費者の実質消費は増えたはずだ。

 なお、輸出が増えなくとも、国際収支の面で心配する必要はない。なぜなら、日本の所得収支はプラスだからだ。

 内需依存経済を支えるマクロ経済政策は、金利を上げ、円高を容認するものである。財政赤字が拡大して国債発行が増加することも、金利を押し上げる力となる。

 以上が90年代以降の日本の姿である。それは、金持ちになりながら、生活を豊かにすることを考えず、稼ぐことばかりを考え続けていた人のようなものだったのだ。