https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

【世界を斬る】(最終回)オバマ政権と世界(3−1)

ロシアはシニカルで「しょせんは力がすべて。自分たちの縄張りを確保すればいい」と。価値観など意味ないという感じです

アメリカは新たに「グリーン」の発想、環境の発想を入れて戦争以外の価値観で経済危機を脱する実験をするのかなという印象を受ける。

まず08年はほんとに「アナス・ホリビリス」(ひどい年−エリザベス英女王が使って有名になった)だった。こんなひどい年は戦後初めてじゃないですか。ミャンマーのサイクロン、四川大地震から始まって食糧価格が暴騰、原油価格は7月に147ドルに。8月がグルジア戦争、アフガニスタンではタリバンが攻勢に立ち、ムンバイなどへテロが拡散。ソマリア海賊被害の激増。そして9月にリーマン破綻(はたん)で世界金融システムがメルトダウンしちゃった。

いろいろな指標を見ていると、オバマ政権の最初の2年は経済がさらに悪化し、後半の2年に緩やかな回復過程に入るという気がします。オバマは再選されると思いますが、2期目には世界は明るい成長軌道に乗ると思います。

経済危機、アフガニスタン、対露関係。巨額の財政赤字と国論の二分。多様な価値を統合する新しいプラットホーム作りをオバマ氏に期待するしかないと思う。

金融危機さえなければ、ロシアは佐藤さんの言う新帝国主義へ向かっていたでしょう。ところが何といっても自信の源だった石油価格が40ドルに下落して安定化基金を取り崩して足元の火事を消すのに精いっぱい。グルジア戦争で時価総額の40%が株式市場から消えた教訓もあって、性急なことはできない。

冷戦時代のソ連と現在のロシアとの本質的な違いはイスラエルとの関係です。いまだに両国の関係が悪いという勘違いが多い。グルジア問題ではイスラエルとロシアは対立したが、クレムリン原油市場動向をイスラエル専門家に相談したり、という不思議な関係にあります。ロシアとの反テロ協力もイスラエルのほうがアメリカよりも早く始めて、かつ深い。

【世界を斬る】(最終回)オバマ政権と世界(3−2)

核を使った者が殲滅(せんめつ)されるような制裁が加えられないなら、テロ集団の核に常におびえながら生活することになる。

そうした事態に立ち向かうべきアメリカ自身の倫理性が一貫していない。いまだに小型核爆弾の開発を続けて、ご都合主義的に「国益に必要なら使う」という政策がある。

テロが変容してインド、パキスタンアフガニスタン全体が連動する動きが出てきた。

犯罪への国際社会の対応能力の弱さはソマリアの海賊問題に表れていますね。人質の乗った船がたくさん並んでいるのに何もできない。

ソ連イスラム原理主義を解体した例があるんです。1920年代の中央アジアで、「バスマチ(反乱者)運動」という、今で言う原理主義の連中が残ってしまった。スターリンはその指導者らをコルホーズの長などに任命したり、「お前たちは実は別々の民族でキルギス人、カザフ人、トルクメン人、ウズベク人、タジク人だ」と言語の違いで5つの共和国を作って共産党第1書記などの役職を与え、モスクワからはお目付け役を第2書記として送り込んだんです。

そして食品工場を建ててパンを焼く。シャンパンやコニャックも作り、ロシア人がうまそうに飲む。彼らもおそるおそる飲み始める。ダンスホールや団地もたくさん造った。40年ぐらいかけて、ソフトパワーイスラム原理主義の世俗化に成功したわけです。

日本が世界の治安と安全の確保に主体的意思を持って参加しないで、国際的圧力を逃れる最低限の行為だけでお茶を濁すというのはもう続かない。

【世界を斬る】(最終回)オバマ政権と世界(3−3)

 今回の危機でわかったことは「G7だ、G8だ」というのは70、80年代のものだということです。日本は新しい現実を直視しようとせずに、いまだに中国をG8に入れないために汲々(きゅうきゅう)としている。G20まで広げる必要はなくとも、国際的意思決定メカニズムの中で「世界第2位」にこだわる意識はもう捨てたほうがいい。個別分野では日本が1位のところも、2位のところもある。もっと機能的に世界の安定と繁栄に貢献していかなければいけない時代です。