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【人、瞬間(ひととき)】あの言葉 宮大工棟梁 小川三夫さん(61)(下) 技法は先人の恵みなり

 法隆寺の宮大工が代々口伝えで遺(のこ)してきた言葉を、師匠の西岡常一(つねかず)が語り出したのは、現場を退いてからのことだった。

≪神仏をあがめずして伽藍舎頭(がらんしゃとう)を口にすべからず≫。社寺は人々の心のよりどころなのだから、技だけを語るべきではない。

≪堂塔の建立の用材には木を買わず山を買え≫。製材された木は、どんな環境に生えていたかわからない。育った環境から使い道を決める。

≪木は方位のままに使え≫とも。木にはくせがある。日当たりのいい方向の木は建物の日当たりのいい位置に使う。

≪木組みは寸法で組まず木の癖で組め≫。右にねじれた木を左にねじれた木と組み合わせると頑丈になる。

「世界最古の法隆寺はふぞろいの部材だらけ。それでも1300年もってる。いや、それだからこそもっているのかもしれませんね」

 ≪諸々の技法は神徳の恵みなり、祖神忘れるべからず≫。身につけた技術や知識は特定の誰かのものではない。先人から受け継いだものである、と。

 「いつまでもオレが棟梁(とうりょう)ではあかん。譲る番や」

 ≪人に任せ、人に譲ることで、伝統を生きたものとしてつないでいけ