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田原総一朗の政財界「ここだけの話」総理大臣候補が思い浮かばない理由

 何ゆえ今、首相にふさわしい人間がいないのか。そして、我々日本人が今、拠(よ)って立つものは何なのか。

日本が戦争に負けた直後、アメリカは日本をできるだけ弱い国にしようとした。弱くて、再び戦争のできない国にしようとした。だから憲法を作った。憲法9条を作り、軍事力を作れなくした。

 さらに日本はアメリカの空襲によって大工場はほとんどぶち壊されたわけが、アメリカは、日本の残った工場設備も、他のアジアの国々に持っていこうとした。つまり、日本を経済的にも復活できない、弱くて貧しい国にしようとしたのだ。

 ところが、東西冷戦が起きた。

 その東西冷戦が起きてから、アメリカは日本を、ソ連、中国など東側に対する、西側の橋頭堡(きょうとうほ)にしようとした。

 このように、日本を橋頭堡にしようとするための冷戦時のアメリカの戦略によって、日本は、世界に奇跡とも呼ばれる高度経済成長を成し遂げることができた。

 言ってみれば、日本はアメリカの子分であることにより、世界で奇跡といわれるほどの繁栄を遂げたのだ。

 正直に言って、僕は1980年代の前半までは、日本がアメリカの子分になったという選択は極めて正しかったと思っている。

 ところが、80年代の後半、日米経済摩擦が起きた。これはつまり、アメリカの製品よりも日本の製品が優れてきたことにより、アメリカが日本に色々といちゃもん、難題を突きつけてきた。

 日米経済摩擦の最中に、冷戦が終わった。

 しかし、その言葉を裏切るかのように、1990年、イラククウェートを侵略し、湾岸戦争が起きる。

 さらに、湾岸戦争が終わると時を同じくして、バブルがはじけ、日本は大不況に陥った。

 冷戦が終わって、共産主義が滅びて以降、アメリカが世界の中心で、いわばローマ帝国を上回る帝国になっていた。

 ところがそのアメリカがイラク戦争で失敗し、軍事超大国としての世界からの信頼をぶち壊した。さらに、金融破綻でアメリカが世界を大不況に陥れ、基軸通貨としてのドルがどんどん弱くなった。

 そのような中で日本は、どうも今までのようにアメリカに拠って立つわけにはいかない、アメリカを手本にしてやってはいけない、ということになった。日本は自分の足で立ち、自立しなければならない。

 そうなると、日本が拠って立つものは何なのか。

 日本には、日本とはどういう国であり、どういう国にするのか、といことを言える人間がいない。だから総理大臣の候補が出せなかったのだ。

 日本も戦前は神に拠って立っていた。

 天照大神を頂点とする神道があり、その神の一つの象徴として天皇がいた。しかし戦争が終わり、これは崩れた。

 日本人が拠って立つものは何なのか、ということが、今極めて重大で深刻な問題になっている。そこをしっかりと示す人間がいないので、総理大臣になれる人がいない。

 僕は、これが今の日本の一番深刻で重大な問題だと思っている。