https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

【歴史の交差点】東京大学教授・山内昌之 政治家と賄賂

 古代ギリシアでは犯罪行為として非難する場合でも、賄賂は贈与の一種と考えられた。人からはもらって当たり前、もらえば同等のもので返礼するという原則は、古代ギリシアでは普通で、贈与こそ人のつながりを形づくる社会原理の根本であった

 古代ギリシア人は賄賂について、「悪いけれどもよい」と考えたらしい。賄賂と贈り物の区別がつかないというのは、犯罪と美徳の敷居が曖昧(あいまい)なことを意味する。

 日本人なら、古代の日本語では神への捧(ささ)げ物と賄賂がともに「まひなひ」と呼ばれたことを思い出す。

 賄賂に鷹揚(おうよう)だったギリシア人に転機が訪れたのは、前5世紀初頭のペルシア戦争の時である。ギリシア最大の危機にあっても、一部の指導者は敵国から賄賂をもらうのをてんとして恥じなかった。国益という公共性に照らせばこれほど破廉恥な行為はなく、戦争という国難で賄賂が政治戦略として使われる危険を悟ったのだろう。

外国がらみの疑獄は、日本でも政治の公共性を腐食する不潔さを漂わせる点で共通している。

賄賂とアテナイ民主政―美徳から犯罪へ (historia)

賄賂とアテナイ民主政―美徳から犯罪へ (historia)

民主政アテナイの賄賂言説 (山川歴史モノグラフ)

民主政アテナイの賄賂言説 (山川歴史モノグラフ)