「私の願いは1つ。ここにお見えの衆院立候補予定者に全員そろって帰ってきていただくことです」
「自民党は真の保守政党。私たちは保守の理念をもとに集まった同志だ。今こそ歴史と伝統に培った自民党の底力を発揮し、この国難に立ち向かおう」
この一言が懇談会の流れを決定づけた。
「麻生降ろし」の沈静化には、もう一つ理由があった。自民支持層は「党内のゴタゴタ」にうんざりしており、加担した議員の多くが地元選挙区で激しい突き上げを食らっていたのだ。
衆院本会議直前の自民党代議士会でも一瞬緊張が走った。先の代議士会で首相に面前で退陣を迫った中川秀直元幹事長が挙手し、再び演壇に立ったからだ。
だが、中川氏の声色は穏やかだった。「今日の首相のあいさつは非常によかった。潔く首相の決断を受け入れ、一致結束して戦いたい」。話し終えると首相に握手を求めた。
「選挙に負けることを前提にした質問に私が安易に答えるとお思いか。今から選挙で戦うんですよ。あらん限りの力を振り絞ってやるのが選挙なんです」
21日夕の記者会見。今回ばかりは安全運転で質疑に応じてきた首相が気色ばんだ。与野党で過半数を割った場合の責任の取り方を執拗(しつよう)に問われたからだ。
「どうして自民党はこんな政党になってしまったのかな…」。17〜20日の4日間、首相公邸に籠(こ)もり、衆院選のメッセージを練り続けた首相は周囲にこうぼやいたという。