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宮田秀明 ハブ空港とハブ港を日本に取り戻せ

 輸送と交通問題を正しく議論するためにはフロー(流れ)とネットワークの理解が欠かせない。ネットワークが“構造”でフローが“機能”である。計画や設計には“構造”と“機能”の正しい関係作りがキモである。貨物や人の移動(流れ)が最適になるためのネットワークを作って実現させること、これが輸送・交通の基本的なテーマである。

 40年前、コンテナ船による輸送が始まった時、コンテナのフローとネットワークは単純だった。アジアの工場は日本だけだったから、フローは、日本と北米を結ぶものと、日本とヨーロッパを結ぶものだけでよかった。

 それから40年の間に、世の中は変わった。アジアの生産基地は中国や韓国、台湾やその他の東南アジア諸国に移った。日本の製造業のこの地域への生産拠点移動の速さは特筆に価するものだ。日本の製造業の競争力を確保するための経営モデルの変更が円滑に行われたということもできるだろう。

 その過程で、アジアのハブ港が、シンガポール、香港・深セン、上海、釜山になり、日本の港がハブ港の地位を失ったのは経済合理性から当然のことだったという面も否定できない。しかし、一方では全国の多数の港湾にバラマキ的な政策を行って、戦略性の全く欠如した港湾“建設”を行ってきたことの影響も大きい。

 もし日本の港にハブ港の機能を取り戻すとすれば、関東に一港だけハブ港を作るのが現実的だろう。関西の貨物は釜山をハブ港にする場合も多いし、アジア発のコンテナ船の70〜80%は日本を無視してアジアからEUや北米へ向かっているのが現実だからだ。過去10年間の韓国の運輸政策に日本が負けたということなのだ。

 私たちの研究室の研究成果の一つは、海上貨物の輸送問題では、東日本に一つだけハブ港を作るべきというものだ。釜山から遠いし、関東圏の経済力は今でも強力だ。関西や九州のハブ港では、近隣諸国に対する競争力がない。福井県敦賀港をセカンドハブ港として、釜山港から津軽海峡に向かう船に寄ってもらうのは次善の第2ハブ港案だ。

 空港の場合は、羽田と成田を複合させて、日本の一つだけのハブ空港として育てるのがいいだろう。両空港間の高速アクセス鉄道が課題だが、前原国交相の考えはかなりの経済合理性がある。