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【日曜経済講座】編集委員・田村秀男 生活を破壊する円高

 昨年9月の「リーマン・ショック」後、FRBは不良金融資産を大量に買い上げては新規にドル資金を発行し、金融市場に流し込んできた。中国も米国に追随している。欧州中央銀行も一時は共通通貨ユーロを大量供給したが、今年に入ってから資金回収する「出口戦略」に転じた。

 対照的に、日銀は緩めの資金供給に終始している。結局、円資金だけが他通貨に比べ際立って控えめな追加にとどまっている。物価下落分を加味した日本の実質金利は米国を上回って円高基調が定着し、デフレが加速しているわけである。

 今、巨額の余剰ドル資金は行き場を求め、再び商品投機に向かいつつある。金が買われ、金相場が高騰しているのはその前触れだ。今後、世界的に景気回復期待が強まれば、原油など資源関連や穀物相場が急騰しかねない。つまり、円高と資源高が同時並行して進行し、円高下の物価上昇が再燃する恐れが強い。

 原油など原材料コストが上昇しても、需要不足のため、企業は製品価格を引き上げるわけにはいかない。結局、人件費を切り詰め、投資を減らす。これがさらに需要を減らし、デフレ圧力を強める。雇用情勢も悪化し、家計が圧迫される。円高と原材料高、物価急騰は日本の家計と企業の双方を追いつめるだろう。

白川方明(まさあき)総裁らは、デフレ不況でも利上げなど金融引き締めは可能だと本気で検討している。今後、原油価格が上昇すれば、ただちに政策金利を引き上げる挙に出かねない。