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平成22年度入行式における白川総裁挨拶:日本銀行

中央銀行の本源的な目的は、「銀行券や中央銀行当座預金という通貨を発行し、人々が通貨を安心して使えるようにすることを通じて、経済の発展に貢献すること」です。皆さんが普段使っているお札、すなわち銀行券は、素材としての価値はわずかなものです。しかし、それにもかかわらず、銀行券が額面通りの価値を持つものとして人々から使われているのは、銀行券に対する信認があるからです。金融市場では毎日膨大な取引が行われており、その決済には中央銀行当座預金が使われていますが、これも中央銀行当座預金への信認があるからこそ可能になっているものです。通貨が信認を維持するためには、物価が安定していること、金融システムが安定していることが重要な前提条件となります。こうした仕事を行っているのが中央銀行です。したがって、通貨の信認を得るためには、中央銀行という組織に対する信頼が必要不可欠になります。皆さんを含めて私たち全員が日々の努力を通じて、国民の皆さんからの信頼を一つひとつ積み重ねていくことが通貨に対する信認を高めていくことになります。その意味で、日本銀行の責任は大変重大です。

 第一にお願いしたいことは、責任感をもって仕事に取り組んで欲しいということです。皆さんが最初に任せられる仕事はそれほど大きなものではないかも知れませんが、職場では皆さんがその仕事をきちんと遂行してくれるという信頼感を前提に仕事を行っています。与えられた役割をしっかりと果たしてください。

 第二にお願いしたいことは、常に新しいことにチャレンジし、仕事の幅を広げていく情熱を持ち続けて欲しいということです。この点では、自分が担当している仕事について専門知識を持つことは当然ですが、その上で、常に好奇心を持ちチャレンジ精神を持って、内容を深め、仕事の幅を広げていってください。皆さん一人ひとりが、任された仕事を核としつつ、常に新たな仕事にチャレンジし、そしてそれが組織としての成長につながり、また一人ひとりの成長につながっていく、そのような前向きの循環を実現したいと考えています。

 第三にお願いしたいことは、チームワークを大切にして欲しいということです。中央銀行の目的である通貨の信認を維持するためには、膨大な知識や経験とそれに裏付けられた多くの人たちの間での共同作業が必要になってきます。政策を立案するうえでは、内外経済や金融市場、金融システム面でのマクロ・ミクロの様々な情報が必要ですし、政策を具体的に実行するうえでは、民間銀行業務や決済システムなど幅広い知識が不可欠です。日本銀行が日々の業務を行ううえでも、相互チェック体制をはじめとして、チームワークは欠かせません。異なる経験や専門性を持った人々の力を合わせることで組織としての力が生まれてきます。どの組織でもチームワークは大切ですが、この点では、中央銀行も全く同様です。

最後に、そして最も基本的なこととして、皆さんは良き社会人、良き市民であって欲しいということを申し上げます。この点では、個人として、また組織として法律やルールをしっかり守ることが大前提となります。それと同時に、法律やルールの背後にある健全な常識に照らして、自らの行動を律することが求められます。

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