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【さよなら歌舞伎座 今月の出演者に聞く】(3)中村吉右衛門

この役を演じるのは8回目だが、演じれば演じるほど、昭和25年に撮影された映画に残る、初代の熊谷の深さ、大きさを実感するという。


 「熊谷の人間的な包容力、大きさが、よけい悲しみを誘う。自分の行為に対する立場の責任、しかし子供を思うと涙するという、それが全部分かるフィルムです。何とか初代のような無常感に近づき、お客さまの心に染みる演技をお見せしたい」

 後白河法皇落胤(らくいん)である平敦盛を討ったとみせかけ、実は一子小次郎を身代わりにし、無常を感じて出家する関東武者。抑え続けた親の気持ちは幕切れ、僧形となり「16年はひと昔、夢だ、夢だ」との台詞(せりふ)であふれ出す。「熊谷の心中深いものがあり、毎回演じきれないところが残ります。何とかそれを演じきりたい」。常に舞台に謙虚であり続けるのは、初代や実父・白鸚(はくおう)、九代目團十郎など先人の舞台を研究し尽くしているからである。

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