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「最初から理路整然と改革を進めたわけではない。 行動の中から吸収したものこそ本物の知識だ」 〜コマツ・坂根正弘会長が語る世界経済の行方と我が経営(下)|DOL特別レポート|ダイヤモンド・オンライン

 本来なら、20世紀の最後あたりで、日本もアメリカもヨーロッパも、成長の限界まで達していた。アメリカの場合は、移民などによって人口が増えているので、それに見合った分くらいは成長余地があった。ヨーロッパはEUで地域的拡大をしたから、その分成長余地が出てきた。


日本だけがその両方がなくて、成長が止まったままだ。ただ、基本は日本もアメリカもヨーロッパも、従来ペースの投資機会がなくなったので、お金が新興国に向かい始めたというのが大きなトレンドであり、それはリーマンショック後の今でも変わっていない。


 だから、今度のギリシャ問題が一段落ついたとしても、日米欧はそれほど成長しないと、私は思います。結局、アメリカですらも成長するためには、新興国の成長を取り入れなければならんし、日本はまさしくそうです。だから、新興国の成長を当てにしないと、先進国はもう成長できない状況になってきていることは、リーマンショックギリシャ問題があろうとなかろうと、変わらない。

 日本のものづくり競争力に関して言うと、狭い意味のコストの中には製造原価と固定費があります。うちは常時、製造原価については、世界中のコストを比較しているが、日本はそれほど高くないんですよ。


 結局、固定費が――日本はこれだけの本社を抱えているということもあるんですが――高い。今回リーマンショック以降で、改めて分かったのは、あれだけ急激に需要が落ち込んだときに、中国でも簡単に雇用を減らせた、あのスウェーデンでもドイツでも、雇用を減らすことができたということです。ただし、その代わりに、国はものすごく手厚いセーフティネットを張っている。


 それが日本では雇用に手を触れようものなら、「何だ」ということになる。もちろん雇用契約期間中に雇用調整をやるなどということは、絶対に許してくれないし、多くの企業もなんとしても(従業員を)抱えようという気があって、気がついてみれば、海外の企業はあっという間にスリムになって、赤字も出さないのに、日本企業だけがひたすら赤字を出すという状況になっていた。


 だから、日本は需要の変動に対する順応性というか、フレキシビリティがやはり低い国なんです。これが一番の問題でしょう。やはり、あまりに部分最適ばかりを主張していると、全体最適が達成できずに、海外企業に負けてしまいます。雇用調整が必要な時には、思い切って実施して、その代わりセーフティネットを張って、その人たちを助ける。また景気がよくなってきたら、雇用を増やすというような柔軟性のある労働市場にしていかないと、「やっぱり日本にいたらダメだ」ということで、企業はみな外にいってしまうと思うんです。


 だから、一番の問題は日本の製造コストが高いということよりも、そういう柔軟性がないということです。景気には必ず山・谷があるのだから、それに合わせないといけない。合わせるために雇用調整するということは、世界の常識なのだけれども、日本だけはその常識が通らない。


 気がついてみたら、正社員は世界一守られていて、非正社員は世界一守られていないという極端に形になってしまった。非正社員を守ろうというのなら、正社員の雇用についても、もう少し柔軟性があってもいい。そうでなかったら、そろばんが合いません。雇用の柔軟性を持つことができれば、日本ではまだまだもの作りをやっていける。うちの場合は、自動車のように大量生産ではないので、エンジンとか、トランスミッションとか、油圧機器などの本当に大事なキーコンポーネンツは、日本に集中している。だから、栃木県の小山工場は、現在はピーク時のフル生産に完全に戻っています。


 こうしたキーコンポーネンツについては、日本で徹底してやっていこうと思っているので、どこで作ったらコストが安いかなんていう議論は全然していません。とにかく品質を追求していくのが目的だし、技術も流出させたくない。そういう点では、自動産業でも、例えばハイブリッド車の基幹部品みたいなものは、当分の間、日本集中生産になるのではないでしょうか。

 例えば今、みんな中国はバブルだ、バブルだと心配していますが、普通はバブルになると、お客さんは「今ちょっと仕事はないけれど、買っておこうか、玉(ぎょく=機械)がなさそうだから」となります。そうなると、機械を買っても置いてあるだけというケースが多くなってくる。うちは販売した翌日から、その機械がエンジンをかけて仕事をしているかどうかがわかるんです。だから、売った機械が直ちに動いている限りは、これはバブルではないと判断できる。バブルの場合は、必ずどこかで機械が遊び始めます。


 そういう情報を基に、販売・生産・在庫のマネジメントをやっている。これは末端売りイコール生産量にしたいというわれわれの思いがあって、実現したんですね。今度は中国で仕上げた仕組みを、日本やアメリカに持ってこようとしているんですよ。

リーマンショックは、世界経済の比重が大きく変化していることを示すとともに、市場原理主義や、時価総額経営などの行き過ぎについても、警鐘を鳴らしました。


 私は頼まれてよく講演をしていますが、その冒頭で次のようなことを言います。リーマンショック以降、何が問われているかといったら、一つには世界は本質的にどんな変化をしているのだろうかということ。日米欧時代が終わったというのは極論だとしても、日米欧の中だけで考えても、成長機会はほとんどなくなった、なかでも日本がその代表的な国なんだと話しています。


 だから、世界の大きな流れは日米欧中心経済から、グローバル経済、特にアジアの経済に移っている。そういう流れの中で、新興国はどんどん人口が増え、街づくりが進んでいるから、資源、エネルギーを使うし、食糧・水が足らなくなり、医療や地球環境など、世界共通の課題が出てきている。


 そういう変化が起こっているからこそ、自分たちの強さは何かということをしっかり認識しなくてはいけない。特に頭のよい人ほど、強さ弱さのうち、弱さを議論する傾向があるけれども、強さは何なのかということをしっかり見極める。

 整理して言うと、世界の真の動き、それから自分たちの強さ弱さを見極め、これに対応した、自分たち流の企業価値のあり方、それを支える企業体質の構築・強化を、合理的な進め方で行っているかどうかで、その会社の力が何年か経つと大きく変わってくると思います。

―企業経営では、的確なイシューセッティング(問題設定)をするというのが、重要ですね。イシューセッティング自体が、間違っていれば、企業はあらぬ方向に行ってしまう。どのようにして、イシューセッティングの能力を身につけてこられたのですか?


 私自身の資質に負う部分もあるかもしれませんが、私の座右の銘知行合一、知識と行動が合わさって一つ。行動を起こしながら、その中から知識を吸収し、いろんなことをやってみて、本物の知識ができあがってくるという言葉です。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20100615#1276581900(その代わりに)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20100615#1276581901(日本だけはその常識が通らない)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20100615#1276573597(そういう情報を基に)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20100616#1276695280(合理的な進め方)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20100616#1276659066(強み→このことを理解したうえでの改革が必要)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20100613#1276438104(弱さを議論する傾向)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20090110#1231554076(的確なイシューセッティング)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20100611#1276234864知行合一


http://d.hatena.ne.jp/d1021/20100403#1270283172(趙括兵を談ず)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20100616#1276671005(私心による小沢排除)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20100613#1276385449(リーダーシップ)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20090131#1233365293(エリートが駄目な国は駄目)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20100520#1274338393(【極秘情報】小沢一郎の十八番)