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【山河有情】元検事総長・但木敬一 検事バッジは「秋霜烈日」か

もともと検事バッジは検察官記章規程によって定められているが、「紅色の旭日の周囲に白色の菊花弁十二弁及び金色の菊葉四葉を配した七宝製」とあるのみで、秋の霜に結びつく文言はなく、秋霜烈日と関係づけるのは難しい。

 ところが、この記章の原型を作成した担当者は、55年法務省の研修誌で秋霜烈日説を有害無用の説と論難している。

担当者は、この図柄について、何かを具象したものではなく、平等と公平の正義を追求する検察官にふさわしい均衡と調和に満ちた抽象的デザインであり、秋霜烈日は後世のこじつけにすぎないという。

 翌25年7月法務府(法務省の前身)の前述の規程によって記章が正式に認められたが、その形状は「旭日、菊花弁、菊葉」を表すものと定められ、既にこの段階で抽象的デザインとする原型制作担当者の意と乖離(かいり)したということになる。

 結局、バッジの意味は、それを胸に着ける者の気持ち、それを見る人の感じ方によって決まるものであろう。秋霜烈日がもっぱら刑罰の厳しさを意味し、検事が人に厳しく接することを表すというなら、原型制作担当者の嘆きも頷(うなず)けよう。これに対し、検察官の職務に求められる厳しさ、すなわち個々の検察官が厳正公平、不偏不党という姿勢を貫き、法と証拠と検察官としての良心にのみ従うという職務の在り方を表し、これを自戒させるものとして秋霜烈日を表象するバッジがあるというなら、それを嫌う理由もないであろう。

刑事訴訟法

第一条  この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。