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The Quants: How a New Breed of Math Whizzes Conquered Wall Street and Nearly Destroyed It

【書評】『ザ・クオンツ　世界経済を破壊した天才たち』

　第１は学問が便宜上置いた前提と、証明済みの事実との取り違え。相場の上下動幅は正規分布せず、極端な変動（いわゆるブラックスワン）が高い頻度で生じることは、早くも１９６０年代、実際のデータを検証した論文で指摘されていたのだが、彼らは学校で教わった理論をタテに眼前の反証を無視した。同じ過ちは評者の見るところ、供給が需要を決するなどの「便宜上の前提」の多いマクロ経済学の分野でも繰り返されている。

　第２は、文化による発想への束縛。主要登場人物に取り憑（つ）いている、金儲けへの異常なまでの執着と相場変動を支配する完全な理論（アルファ）への希求は「個人の強欲を際限なく肯定しつつ、最後の審判を謳（うた）う一神教を奉じる」という特殊な米国文化にナイーヴな数理専門家たちの発想が縛られている証だ。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20101104#1288837236