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(中)民主党色払拭図る 周到な舞台装置

 国民年金や厚生年金などを一元化させ、保険方式にあたる所得比例年金と全額税方式の最低保障年金(月額7万円)に再編する民主党案は、先の衆院選マニフェスト政権公約)の目玉政策だ。ところが菅は「数字の面でまだ確定した案になっていない」とあっさり認め、一元化も「難しさは認識している」と告白。この瞬間、民主党案は一体改革論議の舞台から消えた。


 「石井さん、いいねえ」


 身を乗り出すように議論を聞き入っていた経済財政担当相・与謝野馨は、予算委が休憩に入ると、ニヤリとしてつぶやいた。自らが信じる改革を進めるには、民主党マニフェストが邪魔だと感じていたからだ。

 一体改革にあたり、与謝野は舞台装置を重視した。


 政府・与党案を最終決定するのは政府・与党社会保障改革検討本部(本部長・菅)だが、下部組織として「社会保障改革に関する集中検討会議」を新設した。


 こちらの議長も菅が務め、事実上の決定機関となる。政権と民間の有力者で構成され、議論を通じて各界の「お墨付き」を得る形態は与謝野の「十八番」。自公政権経済財政諮問会議の復活ともいえる。


 タイムスケジュールも入念に詰めた。検討会議は5日に初会合を開き、3月までヒアリングを実施(第1フェーズ)。4月に社会保障制度改革案を策定(第2フェーズ)する。5月からは消費税率引き上げを視野に入れた財源論議に入り、6月に一体改革案を取りまとめる(第3フェーズ)。

 このため検討会議の民間メンバーの人選は、民主党側に漏れないよう秘書官だけと調整してきた。


 まず念頭にあったのが麻生太郎政権時の安心社会実現会議の主要メンバー。電通名誉相談役の成田豊は実現会議座長。東京大大学院教授の吉川洋は座長代理で、福田康夫政権の社会保障国民会議でも座長を務めた。北海道大大学院教授の宮本太郎も実現会議の報告書作成に関与している。


 そして元自民党衆院議員で元厚生労働相柳沢伯夫。与謝野は平成17年の自民党政調会長当時、経済財政担当相(当時)の竹中平蔵ら「上げ潮」路線に対抗し、財政改革研究会(財革研)を発足させ、消費税率引き上げを不可避とする中間報告をまとめた。この際に政調会長代理であり、財革研座長として与謝野を補佐したのが柳沢だった。

 検討会議の設置も会議の人選も菅は与謝野案を丸のみした。1月31日には与謝野を支える事務局が拡充され、秘書官も厚生労働、財務両省から1人ずつ派遣され、計5人に増強された。狙い通りの布陣を敷いた与謝野は新しい事務局を訪れ、こう鼓舞した。


 「いよいよ一体改革の実務が始まる。党のためとかではなく、国民のために仕事をするんだという意気込みで頑張ろう!」