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「情報発信、咀嚼し丁寧に」山口彰・大阪大大学院教授(原子炉工学)

 福島第1原発の状態は、短期的には不安定で楽観できないが、大きな流れとしてはよい方向に向かっている。注水され温度が低下傾向で、電源も復旧し始めた。周辺の放射線量も半減期のカーブに沿った形で減少。新たな放射性物質の拡散はないと考えられる。


 煙など目立つ事象に目を奪われがちだが、重要度や緊急度という情報の咀嚼(そしゃく)を加えた上でのアナウンスが、政府やマスコミなど情報を流す側には必要だ。情報は1次元でなく、時間軸や正確さの度合い、受け手によっても変わる。


 数字も瞬間値ではなく傾向が重要なときもある。水も東京などで放射性物質が検出されるのは当然で、日がたつと減少するのも予想されたことだ。プロセスを伝えないといけない。


 その意味で、政府が現在示している暫定基準値は、もう少し丁寧な説明が必要ではないか。国民には数値より、飲んだり食べたりして大丈夫かが大事だ。平時から、非常時に対応できる基準も考えておけばよかった。


 政府の情報公開の仕方がよいか悪いかは分からない。不確かな情報だから出したらダメ、というのではなく、官房長官が不確かだが…と断りながらも発信するのは重要な情報なら信頼性を高めると思う。


 しかし「おやっ」と思ったのは、原子炉への放水で閣僚が「きょうが限度だ」と発言したとき。「失敗すれば大変なことになる」という意味に等しい。だとすれば、なぜ限度か根拠も示して言う必要がある。非常時に指揮を執る人間は情緒的発言をしてはいけない。


 官房長官原子力安全・保安院東京電力が毎日それぞれ記者会見すること自体は悪くないが、役割分担が不明確。優秀な専門家に情報を解釈してもらい、政府はスポークスマンの役割、と分担するといい。