「人類は『文明の転換期』に入った。私たちは今、そう悟るべきだと思うんです」
東京・品川の高層オフィスビルの11階。「少なくとも『科学に頼れば何事も可能』といった近代西洋社会的な発想とは、決別する時期に来ていますね。東日本大震災は、日本人に、その哲学と思想を覆す覚悟を迫っているのではないでしょうか」
「バベルの塔」は、確か、神を恐れぬ人間が、天を突き上げるような塔を築き、神の怒りに触れる話だ。
「そこにあるのは、『科学の力で自然を征服する』という人類のうぬぼれと、高慢」。
「グローバリズムに完全に目をそむけて日本が生きることはあり得ません。グローバル競争の現場で闘う優秀でしたたかな人材は、全人口の1割でいい。彼らに稼いでもらって、残りの9割は富を分配してもらい、日本型共同体社会の再構築にいそしむ。この二重構造が重要なんです」
「圧倒的な軍事力を見せ付けられ、嫌々組み込まれていった」。260年の平和な江戸期にはぐくまれた独自の文化や伝統は、黒船の前にひれ伏すしかなかったのだ。「しかし、近代西洋思想の根本は、前にも述べましたが自然の征服なんです。彼らもかつては自然へのおそれを抱いていましたが、『近代哲学の祖』とされるデカルトやベーコンが自然征服論を唱える。自然を単なる物質とみなし、収奪すべきだという哲学です」
「明治維新から150年。進歩史観も科学絶対主義も、すでに飽和点に達しているんじゃないかと思うんですよ。こうこうたる電気の光で埋め尽くされ、それが豊かさだといった錯覚。文明の転換点だと私は改めて言いたい。日本人は、自然をおそれ、慈しむ古来の穏やかな自然観に立ち返るべきだと思うんです」
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