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【高橋昌之のとっておき】たばこ増税への反論!野田政権の安易な増税路線をただす

 第1に「喫煙者の8割から9割が禁煙したいと言っている」という部分です。これに関する公式なデータは、それこそ厚生労働省が平成21年に行った調査ぐらいしかありません。それによると、習慣喫煙者のうち「たばこをやめたいと思う人」の割合は男性31・7%、女性41・6%にすぎず、小宮山氏の発言とは大きくかけ離れています。


 この点を厚生労働省に聞いたところ、「小宮山大臣はどこかの製薬会社のデータか何かをもとに発言されたのではないでしょうか…」と戸惑っている様子でした。小宮山氏は閣僚になったのですから、いい加減なデータをもとに発言をしてもらっては困ります。


 第2に各国のたばこ価格における税の割合です。たばこの価格は欧米の主要国と比べると、日本の方が安いのは確かですが、これはたばこ税が安いからではありません。


 たばこ価格におけるたばこ税の割合を各国で比較すると、日本は英国、フランス、ドイツとほぼ同水準の6割前後で、米国は5割強にすぎません。欧米の主要国のたばこ価格が高いのは、たばこ税が高いためではなく、付加価値税(日本においては消費税)や生産コストなどが高いためなのです。


 したがって、欧米の主要国に比べてたばこ価格が安いからといって、たばこ税を引き上げるべきだというのは、国際社会の実態を無視した全く根拠のない主張と言っていいでしょう。

 第3に小宮山氏は「日本はたばこ規制枠組み条約にも批准をしながら、それを守らないという本当に世界で不思議な国になっている」と発言しましたが、これは同条約を理解していない発言です。


 同条約が締約国に義務づけているのは、たばこの消費削減ではなく、たばこの広告規制や健康被害の警告表示、未成年者の自動販売機による購入防止などで、日本はきちんと義務を履行しています。それを閣僚が「条約違反をしている」と発言したのは、理解不足どころか実は大問題です。

 もし、喫煙に絶対反対だというなら、法律で禁止するよう、正面から主張したらいいのではないでしょうか。しかし、そこまでは言わないわけです。法律で禁止されていない以上、喫煙の権利はあるわけで、尊重されてしかるべきです。


 あるいは小宮山氏のように「喫煙者でやめたいと思っている人を後押しする」というなら、病院や薬品による禁煙治療を推進する施策を具体的に提案すべきです。厚労相になったのならなおのこと、そちらの方で真剣に取り組んだらどうでしょうか。


 それをたばこ増税で価格を上げることで喫煙者を減らそうというのは、喫煙者の権利を踏みにじるものです。昨年10月の増税でたばこ価格は1箱当たり約100円高くなりましたが、1日に2箱吸う人で計算すると、年間7万3000円もの支出増となり、たばこ1箱(410円の場合)当たの税負担(消費税を含む)は264円で、年間で何と約19万円にも上ります。


 こんなに個人の負担が重い税は日本国内で他にはありません。私は税の公平性の観点からいって、たばこ税は現在の水準ですでに問題があると思っています。

 これ以外に、たばこ増税がどれほど税収を増やす効果があるかという点も議論のあるところです。昨年10月のたばこ大幅増税で税収がどうなったかといえば、増税前の平成22年1〜7月はたばこ税収(国税分)が5678億円だったのに対し、増税後の今年1〜7月は6573億円で、895億円の増加です。


 確かに税収はアップしていますが、規模は思ったほど大きくはなく、1箱約100円という喫煙者の大幅な負担増を考えると、それに見合った税収増とはいえないと思います。したがって、これからさらに増税しても税収を増加させられるかどうかは、甚だ疑問です。