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重大事件で相次ぐ“裁判官の追試”差し戻し判決とは

 最高裁や高裁が下級審の判決に誤りがあると判断した場合、その判決を破棄する。これが、冒頭のベテラン裁判官がいうところの「赤点」だ。「自分の判決がダメ出しされるわけだから、それだけで気分はよくないですよね」


 この際、上級審には、差し戻して下級審に「追試」を受けさせるか、自ら判決を言い渡す自判をするか、2通りの選択肢がある。法律判断がメーンで新たな証拠調べを行うことが少ない最高裁の場合は、差し戻すのが通例。これに対し高裁が1審判決を破棄した場合、自判するのがほとんどだ。


 だが、差し戻しに対する裁判官の意識は変わってきているという。高裁での勤務経験がある別のベテラン裁判官は「裁判員裁判という『黒船』が与えた影響が大きい」と説明する。


 裁判員制度の導入が決まったのは、16年5月。その段階から、控訴審のあり方が新たな課題とされてきた。裁判員裁判が行われるのは1審だけ。国民から選ばれた裁判員が下した判断を、職業裁判官のみが審理する控訴審が破棄するのは「民意」に反しているのではないか−。


 こうした問題提起を受け、最高裁法研究所は20年11月、「できる限り1審判決を尊重すべきだ」とする研究報告書をまとめた。だが実際には、裁判員裁判の判決を破棄するケースも出てくる。その場合でも自判するのではなく、差し戻して再び裁判員の判断に委ねるのが望ましい、というのが現場での認識なのだという。


 「これまでは下級審の判決を破棄する以上、自判するのが上級審の責任だという自負があった。しかし裁判員裁判に限らず、差し戻しへの抵抗感が薄れたのは間違いない。むしろ重大な事件であればあるほど、差し戻して慎重に審理するという意識が芽生えましたね」