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「憲法と3・11」伊藤真インタビュー(その2)‐シリーズ「3・11以降を生きる」

憲法の根本的な意義と役割は「権力に歯止めをかけることである」という憲法学の本質を繰り返し説いている伊藤真さん。だとすれば憲法は、国、政府、そして原発マフィアという「権力」の暴走に歯止めをかけることができるのでしょうか? そしてどう復興に取り組んでいくべきなのでしょうか?

伊藤  憲法は、個人のための国家を要求しています。国家のための個人ではないし、国のための復興ではない、経済界のための復興でももちろんない。一人ひとりの自立のための復興でなければ、誰も救えないと思います。そのためには、被災地の地元の一人ひとりが自ら立ち上がって、人間のための復興を考える。被災者は国に、復興のための権利として私たち一人ひとりの復興を、私たちが考える復興を手助けしろ、と言っていいのです。

伊藤  権利という日本語は、英語ではRightであり「正しいこと」という意味を持っています。ドイツ語、フランス語においてもそうですね。日本もこの言葉が入ってきたばかりの時は、権理という翻訳になっており、理性の理があてられていました。今は利益の利、利己主義の利のため、どうしても「権利ばっかり主張して、義務の方はどうなの?」という風潮がありますが、もともとは「正しいこと」「正義」という意味なんですよ。ですから堂々と主張したらいいことですし、主張していかないと権利は維持できなくなってしまうものです。ただ今の福島の避難の権利については、当事者はなかなか地域の人間関係もあり、言いづらいこともあると思うので、その時はまわりの人が声を上げていく、直接の被害を受けていない人たちが、代わりにやってあげることは必要だと思います。

編集部  伊藤先生は、以前から原発には反対だったと、twitterで発言されていました。それは具体的にどのような体験があったのでしょうか?


伊藤  英語では両方ともnuclearなのに、日本語では原子力と核という、言葉の使い分けがそもそもおかしいですね。厳密に原子力発電でなく、核発電という言い方をして欲しいと思います。原発を稼働することで、核兵器の元になるプルトニウムをどんどん蓄えていきます。また原発を持つことは、テロリストの格好の標的にもなるわけです。しかし今、日本の国土の上にそれを大量に持ってしまっている。それはまさに平和の中で生きるという、平和的生存権に真っ向から反する状態を作り出しているわけです。このような状態を憲法は許していない、と私は考えています。

伊藤  ドイツの対応は早かったですね。経済的な効率ということからではなく、倫理会議を開いて、倫理的に原発の問題を後の世代に押し付けるわけにはいかない、という結論を出したわけです。物理学者のメルケルさんがそれを決断したのですから、大きなインパクトがありました。