このころ、竹中金融・経済財政担当大臣は、記者会見で「デフレを克服するために政府も日銀も新たな挑戦が必要だ。日銀がインフレ目標を掲げて金融緩和を行う手法についても避けることなく議論して行きたい」と述べ、日銀が物価上昇率を目標に掲げる金融政策の導入を求めていました。
これに対し平成14年12月の会合の議事録では、当時の速水総裁が「十分な裏付けのない宣言でインフレ予想を高めていくことは難しいと思う。そうした宣言自体が政府の政策も含めた政策運営全般への信認を損ないかねない」と述べ、「経済を無謀な賭けにさらす」と発言していました。
また当時の植田委員は「おそらく長期金利の上昇は急激だろうし、2%ぐらいでは止まらないような気がする」と発言し、金利上昇に懸念を示すなど否定的な意見が相次いでいました。
10年前の決定会合で物価目標が議論、「危険な賭け」と却下 日銀が14年下期分の議事録公表
この決定会合で、速水総裁は「インフレ予想ではなくて、成長予想を高めることが重要で、それこそが経済再生に向けた政策の王道」と強調。他の出席者からも「なかなかインフレにならないところから無理矢理やっていくので、かなりの確率で(目標幅を)オーバーシュート(上振れ)してしまう」(当時の植田和男審議委員)などと、物価目標の導入には慎重な意見が相次いでいた。