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客員論説委員・千野境子　今に生きる「学問のすすめ」

　思い出したのが福沢諭吉の『福翁自伝』である。現代語訳（ちくま新書）から引用してみよう。

　《とにかく当時緒方の学生は、十中の七、八、目的なしに苦学した者であるがその目的のなかったのがかえって幸せで、江戸の学生よりもよく勉強できたのであろう。…今日の学生にしても学問を勉強すると同時に始終わが身の行く先ばかり考えているようでは、修業はできないだろうと思う》