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焦点:世界的に株主還元が増加、設備投資が犠牲に| Reuters

 企業が巨額の手元資金を設備投資に回さず、株主に還元する傾向を強めており、世界経済にとって問題を引き起こす可能性もある。


設備投資への消極姿勢は、自社商品の将来需要に自信を持てない表れであり、民間主導の持続的回復への道のりがまだ長いことを示している。


投資家側も、リターンと将来の業績が結び付いているような証券よりも、安定的な利回りが得られる株式や債券を好んでいる。彼らもまた、世界経済は中央銀行頼みの状態が続くと予想しているようだ。


トムソン・ロイターのデータによると、世界の企業が保有する現金および現金に相当する資産は合計6兆7000億ドルと、10年前の倍以上に拡大した。米欧企業が約3分の2を占める。


しかし、カーニー次期イングランド銀行(BOE、英中央銀行)総裁が「死に金」と呼ぶこの現金は、設備投資や企業の合併・買収(M&A)資金ではなく、自社株の買い戻しや配当支払いの形で市場に還流している。


JPモルガンのデータによると、第1・四半期の自社株買い戻し額は全世界で1680億ドルと、昨年第4・四半期の1000億ドルから急増。ことし1─4月の買い戻し額は前年同期比50%増えており、通年では5900億ドルに達すると推計される。


短期的に見れば、自社株買い戻しや配当は、低金利環境の中で利息を求める投資ファンドを確実に喜ばせる。


しかしマイナス面もある。バンク・サラシンの投資委員会のフィリップ・バースキ会長は「企業はコスト削減により利益を可能な限り高く保ち、株主に現金を還元して収益を押し上げようとしている。しばらくはこれが功を奏し、1、2年は利益を押し上げるかもしれないが、長続きはしない。常に現金を還元していると、最終的には自分の首を絞める。だれも投資しなければ生産性は低下する。中期的に収益の伸びを減速させているかもしれないのだ」と述べた。


<鈍い設備投資>


2008年の世界金融危機以来、設備投資の回復は世界中で鈍い。


バンク・オブ・アメリカメリルリンチによると、国内総生産(GDP)に対する投資の比率は米国で07年の17%から13%に、欧州で23%から18%に低下した。絶対額で見た欧州の設備投資は1999年以来の低さだ。


欧州ではただでさえ、政治面の障害により電気水道、交通、通信といった分野の投資が妨げられている。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)のセクター・エコノミスト、ギャレス・ウィリアムズ氏は「財政緊縮策、キャッシュフローへの圧力、根深い信頼感の欠如が続いている。このため企業は設備投資への慎重姿勢を維持しそうだ」と説明。「株主への資金還元は投資家の機嫌を保てる上、設備投資に伴うリスクを正当化する必要もないためより楽な選択肢だ」と付け加えた。


株主への資金還元はリスクが高そうに見えないが、企業がバランスシートのギアチェンジに着手した可能性を示しているのは確かだ。


<持続不可能な流れ>


一つの現象として、歴史的に見て強かった設備投資と企業利益との相関性が崩れている点が挙げられる。


米資産運用会社GMOのデータによると、1929年から86年にかけて、両者の相関係数は0.75だった。87年から99年にかけては0.43に低下したが、過去12年間はマイナス0.48と逆相関に転じている。


つまり企業は、設備投資を減らしながら利益を増やしているということだ。大きな原因は、利益のもう一つのエンジン役である家計が負債を圧縮する中で、政府支出の拡大が経済を下支えていることだ。


しかし政府が支出を絞れば利益は減少し、企業を設備投資再開へと駆り立てるかもしれない。


GMOの資産配分共同ヘッド、ベン・インカー氏は顧客向けノートで「企業利益のGDPに対する比率は過去最高に近く、企業は多額の資金を稼いでいるが、設備投資は大恐慌以来で最低だ。利益は永遠に高止まりすることが可能だろうか。可能ではあるが、その場合は持続不可能かもしれない背景を伴うだろう」と指摘した。