〔BOJウオッチャー〕「下げる」から「働きかける」に、金利上昇で緩和効果を軌道修正 | Reuters
長期金利の上昇基調が強まるなか日銀が景気回復による一定の上昇は自然との発信を強めている。急激な上昇に対しては機動的なオペ(公開市場操作)で対応する姿勢だが、異次元緩和で金利上昇は抑えきれないとの姿勢も示し始めたようだ。
20日の東京市場で、10年最長期国債利回りJP10YTN=JBTC(長期金利)が一時、0.875%まで上昇した。日銀の黒田東彦総裁の同日の月例経済報告関係閣僚会議での発言が、金利上昇容認と受け止められたようだ。内閣府によると黒田総裁は、「日本の5年債、10年債の金利は一度低下したが、株高や米金利上昇で上昇している」、「いずれの国の長期金利も上昇しているが、引き続き低位の動きだ」、「経済・物価の先行き見通しの改善で徐々に金利が上昇していくのは当然だが、日銀の巨額の国債買い入れによる強力な金利低下圧力の下で、長期金利が大きく跳ね上がるとは考えていない」と述べたという。
5月に入り日銀幹部らが異次元緩和は「利回り曲線全体に働きかける」とし、「利回り曲線全体を引き下げる」との従来説明から微修正した形で発信し始めた。金融緩和の結果、景気回復期待で金利がある程度上昇するのを認めたとみられる。
日銀は、4月4日の異次元緩和公表直後の金利乱高下は、日銀による発信やオペ手法にも要因があったとして、毎月の国債買い入れ回数の増加など直ちに工夫を図った。一方、5月9日以降の急速な円安・株高を背景とした長期金利の急上昇は、米景気回復期待を背景とした自然な上昇で、そもそも対応手段も限られているとの考えだ。
あまりに急激な上昇については、当然、国債の利払い費用急増や、不動産投資信託(REIT)・不動産株ひいては株式市場に冷や水を浴びせかねると警戒。実際長期金利が0.92%まで急騰した15日には日銀は1年物の固定金利オペなど総額2.8兆円の機動的なオペを実施し、市場安定化への意思を示した。
一部の日銀関係者の間では、市場安定にはオペでは限界があり、政策の声明文の何らかの変更が望ましい、との指摘も出ている。しかし、主流の意見ではなさそうだ。市場関係者の間でも「22日の決定会合後の黒田総裁会見に過度な期待が膨らむのが心配」(大手行)との声も出ている。