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異次元緩和はばくち、株安は政権へのイエローカード―早川前日銀理事 - Bloomberg

早川氏は7日に行ったインタビューで「仮に、参院選後に経済構造改革をないがしろにし、憲法改正などという方向に走ったら、今はまだイエローカード1枚だが、今度はレッドカード(反則で一発退場)が出る可能性がある。その時は株価はもっと下がる可能性がある。一番怖いのは長期金利の反乱だ」と言明。アベノミクスの鍵を握っているのは「黒田東彦総裁ではなく、やはり安倍晋三首相だ」と述べた。


TOPIX は安倍首相が成長戦略第3弾を発表した5日から3日続落。円相場は6日のニューヨーク市場で一時、約7週間ぶりに1ドル=95円台に突入した。麻生太郎財務相は7日午前の会見で、「介入するとか直ちに何かを今するつもりはない」と静観する姿勢を示しており、日銀が10、11日に開く金融政策決定会合に注目が高まっている。


早川氏は「株価は異次元緩和前の水準に近づいているが、昨年秋に比べればまだ高いし、為替は円安水準だ。ギャンブルとしては今のところうまく行っている方ではないか」と指摘。「もともと大胆な金融緩和は成長戦略までの時間稼ぎだったと考えれば、十分時間は稼いだし、政権の支持率は大きく上がったので、成長戦略に取り掛かるためのポリティカル・キャピタル(政治資本)は相当蓄えることができた」と語る。

その上で、金融市場が不安定化している背景について「恐らく1つは、安倍首相が参院選後、蓄えたポリティカル・キャピタルを成長戦略ではなく、憲法改正などに注ぎ込むのではないかという心配が底流にずっとある」と指摘。「期待を込めて言えば、市場の警告を真剣に受け止め、参院選後にやるべきことをやれば、これも決して悪くないということになるが、逆方向に行くと大変なことになる」と話す。


日銀は4月4日、量的・質的金融緩和を導入し、2年を念頭に2%の物価目標の実現を目指すと宣言した。日銀のチーフエコノミスト的な存在である調査統計局長を2001年から6年以上務めた早川氏は、その実現可能性について「全くそんな感じはない」と語る。


日銀は4月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、生鮮食品を除く消費者物価の前年比が15年度までの見通し期間の後半にかけて「2%程度に達する可能性が高い」と表明した。早川氏は「恐らく日銀の見通しが民間の見通しとこれほどかい離したことはない。前から展望リポートは願望リポートと言われていたが、まさに願望リポートになってしまう。日銀エコノミストにとっては結構大変だと思う」という。

一方で、「どうしても2%に行かなければ駄目かというと、基本的にそうではない」と早川氏は言う。「14年度は消費税が上がるので、本当に物価が2%上昇したらトータルで4%上昇するが、そんなことは誰も望んでいない。本当にそうなったら強い不満が上がるだろう。円高・株安が是正され、景気もちょっと良くなり、物価も賃金もちょっとプラスになれば御の字というのが国民の感覚だ」という。


その上で「構造改革が進み日本経済が良くなれば、物価2%が実現しなくても、日本全体からすると『うそも方便、いいじゃないの幸せならば』で済むが、日銀の立場になれば問題は異なる」と表明。「まず直面するのが、約束を二転三転させることによる信認の喪失だ」と語る。


早川氏が指摘する第2の問題が長期金利だ。「徐々に物価が上がっていけば、いずれ長期金利はもっと上がる。うまくやらないと、長い国債をいっぱい持っている地銀などに相当大きな打撃を与える」と指摘。「細心の注意が必要だが、細心の注意をしたところで、長期金利が思った通りには動かないことは、既に証明されてしまった」と話す。

3つ目の問題が出口だ。「これほど長い国債を買ってしまったら全部売れないのは明らかだ。物価がプラスになり金利を上げる必要が出てくれば、付利を引き上げるしかない。技術論としては簡単だが、実際問題として、膨大な当座預金残高を抱え、大手金融機関に巨額の金利を支払うことになる。政治的に持つのか、という問題がある」という。


日銀は10、11日の会合で、1年までに限定している資金供給オペの期間延長を議論する。早川氏は「ギャンブルをやっている以上、市場が激しく動くのはやむを得ない。期待に働き掛けると言いながら、長期金利は安定していなければならないというのは、いったいどういう発想なのか。長期金利が注目されていたタイミングであればともかく、今はそうでもない。そういう意味でちょっとずれている」と疑問を呈した。