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〔焦点〕-アジア経済構造改革先送りのツケ、米量的緩和縮小観測で露呈 | Reuters

倹約、低水準の債務、高貯蓄率などを連想させるアジアが世界的な信用の縮小による影響を受けやすくなっているとの見方は議論を呼びそうだが、新興国外国為替市場や株式市場で今週見られている大量売りは、アジアが流入資本の急速な逆流リスクに直面していることを示している。

政治的、社会的に複雑な成長阻害要因を取り除けずにきたアジアは特に2008/09年の世界的な金融危機以降、低金利と大規模な借り入れに頼って成長を維持してきた。


この結果、米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和が終了すれば、アジアの成長率目標の達成ははるかに大きな犠牲を伴うことになる可能性がある。

ノムラ(シンガポール)のアジア担当チーフエコノミスト、ロブ・スバラマン氏は「政策当局者らは経済成長を維持することに苦慮し、あらゆる刺激策を講じてきたが、そのために構造改革を犠牲にした」と指摘。「そのしっぺ返しが来ようとしている」と語った。


日本の移民法や労働法、中国国有企業の独占、インドの海外投資に対する障壁など改革の課題は各国でさまざまだが、いずれの国も政治的に実施が困難なものの、成功すれば生産性の回復と成長押し上げにつながる独自の改革を迫られている。

アジアは1990年代終盤の危機以降、世界的なハイテクブームで輸出需要が拡大したことから、痛みを伴う改革の多くを回避することができた。そして、世界的な金融危機が発生した際には域内の健全な財政状況が影響の阻止に寄与した。

国際通貨基金IMF)は2013年のアジア発展途上国の経済成長率が7%になると予想しており、アジアの成長率は依然高水準を維持する見込みだが、金融危機を受けて輸出の回復はそれほど好調ではない。


多くのアジア諸国は輸出低迷を補うため、低コストの海外資金を活用し、成長を維持してきた。


FRBが米経済支援に向け政策金利をゼロ付近に維持するなか、高利回りを求める海外投資家が世界に目を向け、アジアの借り入れコストを押し下げた。


そうした大量の資金流入によって一部の国では成長率が比較的高水準に保たれてきたが、ノムラによると、アジアの民間セクター債務は2012年に域内総生産(GDP)比165%と、アジア金融危機前の127%を大幅に上回る水準に拡大した。


ブラックロックシンガポール)のアジア債券部門責任者ジョエル・キム氏は「アジアは企業業績が悪化するなか、世界と同様にレバレッジを拡大してきた。それが良くない点だ」と指摘した。

エコノミストはこうした借り入れのすべてが生産性向上と成長促進につながる収益性の高い投資に回っていないのではないかと懸念している。


中国は世界的な金融危機への対応策として大規模な信用を低コストで供与。信用の規模は2008─2012年の間にほぼ倍に拡大し、投資はGDPの46%に増加した。ノムラによると、この資金のほぼ半分が不動産やインフラの投資に充てられた。


だが、中国の空きビルや廃墟と化した都市などは不動産・建設セクターへの過剰投資の証となっている。セメント、鉄鋼、石炭などの重工業セクターも過剰生産能力の問題に直面している。

ノムラの算出によると、2012年のアジア主要11カ国の経常黒字は2007年のGDP比6.3%から同1.6%に縮小した。


一部のエコノミストはこうした黒字の縮小について、輸出への過度な依存から消費主導型の成長への歓迎されるシフトとみている。


IMFのアジア太平洋地域担当責任者、アヌープ・シン氏は「多くの国はこれまで主に先進国への輸出に頼ってきたが、内需の役割が拡大している」と指摘した。


ただ、経済への消費の寄与度はまだ大きく拡大しておらず、民間エコノミストはアジアの投資収益低下が懸念されると指摘する。


アジアは支出に見合う価値を十分に得ていない。HSBCによると、日本を除くアジアの労働生産性の伸びは2007年以降、経済成長率とともに低下している。


外資金コストの上昇は、依然として域内の発展に向けた資金を賄う必要のあるアジアにとって問題だ。


エドモンド・デ・ロスチャイルド・アセット・マネジメント(香港)のアジア株担当シニア・ポートフォリオマネジャー、デビッド・ゴード氏は「FRB量的緩和の縮小に関して設定したタイムテーブルは、中国、インド、インドネシアといった主要新興国が重要な構造改革の推進を目指しているときであり、とりわけタイミングが悪い」と指摘した。