“お金儲けは善ですか? 悪ですか?” 「資本主義」の原点、カルヴァンの教えとは?|経済は世界史から学べ!|ダイヤモンド・オンライン
世界経済は「資本主義」に基づいて動いています。しかしそもそも、「資本主義」という考え方はどこから生まれたのでしょうか?そのルーツは古く、ヨーロッパの「宗教改革」にまでさかのぼります。「資本主義の生みの親」とも言える、カルヴァンの思想とその歴史的背景を追っていきましょう。
中世ヨーロッパにおいて、カトリック教会は「蓄財や同胞からの利子取り立ては、『罪』である。しかしその罪は、教会への寄進によって免れることができる」という教えを利用して、莫大な財産を築きます。
カトリック教会の総本山はローマ市の西、ヴァチカンの丘に建つサン=ピエトロ大聖堂です。聖堂の老朽化に伴い、教皇レオ10世は再建を命じます。
レオ10世の本名は、ジョバンニ=デ=メディチ。フィレンツェ共和国の最高指導者でメディチ銀行頭取でもあるロレンツォ=デ=メディチの次男です。メディチ家は、ルネサンスにおいて芸術家を支援した一族としても有名です。
財界出身の最初の教皇が行ったのは、贖宥状(免罪符)の大量発行です。なぜ、こんなことを行ったのでしょうか?
カトリックの教義では、「地獄に落ちるべき罪人も、善行を積むことで罪が清められ、天国へ導かれる」と説きます。善行とは、懺悔、巡礼、寄進であり、三大聖地のローマ、イェルサレム、スペインのサンチャゴ=デ=コンポステラへ巡礼することが奨励されました。
ローマに集まる巡礼者が落とす「お賽銭」が、教会再建の資金となります。そこでレオ10世は考えます。
「ローマに来られない者でも寄進ができるよう、贖宥状を印刷して販売しよう。これを買った者には、巡礼者と同じく罪が清められよう!」
ドイツの財閥フッガー家が、贖宥状の販売を請け負います(もちろん、手数料目当て)。各国政府は財界人教皇の露骨なカネ集めを警戒し、贖宥状販売を禁止します。
しかし、神聖ローマ帝国(ドイツ)では、皇帝カール5世が、皇帝選挙の際に、フッガー家から借金をして票を買収したという経緯もあり、贖宥状販売は黙認されます。
ルターは次のように言いました。
「神は賽銭を受け取らない。受け取るのはローマ教会の坊主どもだ」
「人は寄進ではなく、信仰によって義(正しい)とされる」
「聖職者は不要。万人が祭司であり、世俗の職業も神が与えたもの」
この最後の部分は「職業召命観」といい、改革派教会(プロテスタント)に共通する思想です。
「自分の職業を天職と考え、日々まじめに働くことが、神の御意志にかない、救いの道に通じる」、という考え方です。この思想をさらに徹底したのが、スイスのカルヴァンでした。
「神に救いを求めようという考えが、そもそも不遜である」
「誰を救うかは、神だけが決定権を持つ。人間はこれを変えられない」
これが、カルヴァン思想の根本である「予定説」です。
カトリックは、「罪人も、教会に寄進をすれば救われる」と説きます。そしてルターは、「罪人も、悔い改めて神にすがれば救われる」と説きました。
それらに対しカルヴァンは、「罪人は、救われない。救われる人間は、はじめから罪を犯さない」と冷たく言い放つのです。
罪とは、盗みや偽証、殺人ばかりではありません。富におぼれ、欲望に身を任せることも罪です。食欲や性欲、あらゆる欲望を断ち、日々の勤労に励み、質素に暮らす。この禁欲的な職業倫理を守ることで、カルヴァン派の人々は、「今日一日、罪を犯さずに済んだ」と安心できるのです。
365日禁欲的に働いた結果、何が起こるかというと、財産がたまってしまいます。カトリックでは蓄財自体を罪としましたが、カルヴァンは勤労の結果としての蓄財は容認します。ただその財産で贅沢をするのは罪ですから、財産は消費ではなく、商品を仕入れたり、新たな店への投資に使ったりするのです。
こうして、富が富を生み出し、利潤を上げることを目的とする新しい価値観が生まれます。資本主義です。
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140203#1391424466(We’re going to start from the very beginning. )
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140131#1391166196(The idea is simple but powerful)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140125#1390647198(プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20071222#1198291365(渋沢栄一)
日本資本主義の父といわれる。
理化学研究所の創設者でもある。
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20121206#1354803003(今般朝政一新の時膺(あた)りて天下億兆一人も其所を得ざるときは、皆朕が罪なれば、今日の事朕躬(みずか)ら身骨を労し、心志を苦しめ、艱難の先に立ち、古列祖の尽させ給ひし蹤(あと)を践(ふ)み、治績を勤めてこそ、始めて天職を奉じて億兆の君たる所に背(そむ)かざるべし。)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20080115#1200353333(天真を発揮する)