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「八月の砲声」はスゴ本: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

 いっぽう、戦争のプロセスに着目すると、事実の話になる。宗教上の軋轢や、貿易摩擦、異文化の緊張がどのように高まっていったか、どんな交渉が、どう決裂したかは、事実の話だ。

 本書は、"どのように"第一次世界大戦が始まったか、開戦前後の1ヶ月間の政治と軍事の全体像を検証・分析する。

 戦争を回避しえない、point of no return を超えるとき、必ず吐かれるセリフがある。軍事計画が政治を左右する際、必ず使われる文句だ。もちろん、国や背景は違えども、英、仏、独で共通してこう述べられる―――「一度決定されたことは、変更してはなりません」―――これは、モルトケがカイゼルに直言したセリフで、独軍が犯した全ての過失の起因となり、ベルギー侵略を決行させ、米国に対する潜水艦作戦を遂行させた寸鉄だ。だがこれと同じ文句を、チャーチルが、ウィルソンが、ジョフルがそれぞれの立場を背負って吐く。

内心では、「おかしい」「まずいぞ」と思いつつ、ゴーサインを出すとき、いつも背後からこの言葉で撃たれている。面白いのは、狙撃者は、この「決められたこと」の当事者でないところ。必ず伝聞の形で告げられるところだ。

八月の砲声 上 (ちくま学芸文庫)

八月の砲声 上 (ちくま学芸文庫)

八月の砲声 下 (ちくま学芸文庫)

八月の砲声 下 (ちくま学芸文庫)

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