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ユーラシアの新たな胎動をカザフスタンで感じた (連載「パックス・ジャポニカへの道」) - 原田武夫国際戦略情報研究所公式ブログ

会合において非常に印象的であったのが、「日本人が一人しか出席していない(しかも、実は顔つきが似ているため、事務局を別とすると私のことを皆、「カザフスタン人」だと思っている)」にもかかわらず、我が国に対する惜しみない賞賛の声が繰り返し聞かれたことであった。端的に言うと第二次世界大戦における敗戦であれほどひどい状況になったのに、その後、巧みな産業発展を実現した日本の手腕は素晴らしい」というのである。
我が国から直行便が未だ無いカザフスタンは「遠くて実は近い国」だ。一番楽な方法でそこに辿りつくためにはソウル経由を選ぶのが良いが、そこから5時間のフライトでついてしまう。旧ソ連諸国の例にもれず、独立当初は大変な苦難を抱えていたが、「原油天然ガスを筆頭にほとんどの鉱物資源が大量に国土の地下に眠っていること」「肥沃な国土で食糧自給率が100パーセント近いこと」の2つをアドヴァンテージにしつつ、すぐさま頭角を現した。だが旧共産圏であったことが現在もなお、その経済体制に暗い影を残している。なぜならば網の目のように張り巡らされた官僚制は事実上、マフィア構造を形成しており、汚職がはびこってきたからだ。そうした中で経済改革を志す勢力の中からは「我が国はなぜあの日本のような健全な経済発展を遂げることが出来ないのか」という声が上げられてきたというわけなのである。
私たち日本人は我が国の経済発展の礎は何といっても「大企業の努力」にあったと考えるのが一般的だ。時たま「昭和の想い出」といった形でマスメディアが報じる「熱血!技術開発ストーリー」の主人公はその後、大企業となった日本企業の創業者や主要メンバーたちの伝説ばかりだからだ。だが、カザフスタンやユーラシア諸国の人々が関心を持っているのは全くもってそこではない。「戦後日本の経済発展を支えたのは分厚い中小企業の存在であり、その高い成長力がそのまま日本全体の健全な成長につながったのだ」という事実にこそ、彼らは関心を今、寄せているのである。その実態を目の当りにして、私は正直、会議場の現場だというのに涙を禁じ得なかった。

いずれにせよそのようなわけでユーラシアは我が国にとって今、完全なる「空白地帯」である。特にカザフスタンは2017年にアスタナで万博開催を画策し、かつほどなくして世界でトップ30位の国にまで登りつめようという計画を掲げている。今回のユーラシア・ビジネス・フォーラムの背景には「ユーラシア関税同盟」があり、2015年から2020年までそれは新たな「EU」すなわち「ユーラシア連合(Eurasian Union」としての姿を現すことになる。つまり現代のシルク・ロードが実力を伴う形で姿を現すというわけなのだ。
今回、席上で声をかけてきたルーマニアの政府関係者がこう言っていたのが忘れられない。
欧州連合とユーラシア連合という二つの『EU』がつながることでユーロ・ユーラシア連合が出来上がる。それがここにいる人たちの密かな戦略なのですよ」
東欧の中でもルーマニアと言うと我が国から見てやや縁遠い印象はある。しかしユーラシア諸国の西端がウクライナである時(カザフスタンの西がロシア、そしてそのさらに西がウクライナ)、それに接する欧州の東端はルーマニアなのである。つまりこの巨大な連合体が出来上がる時、ルーマニアは東西の結節点としてこれまでとは全く違う役割を果たすことになるというわけなのだ。

米国も、実はユーラシア諸国、とりわけカザフスタンの巧みな対応に手を焼いている。彼らが中国に原油天然ガスを安定供給し始める、米国が中国をコントロールすることは大いに困難になるからだ。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140413#1397385160
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