MH-17撃墜に関するデータを露政府はEUへ手渡し、米政府の好戦的姿勢に同調しないよう働きかけ | 《櫻井ジャーナル》
ロシア政府もアメリカ政府もマレーシア航空MH17に何が起こったのかを知っているはずだ。両国には強力な情報機関が存在し、通信を傍受しているだけでなく、衛星を使って宇宙から下の様子を監視している。その情報の一部をロシア国防省は7月20日に記者会見で明らかにしたが、それ以上のデータをEUへ22日に手渡したという。シリアの場合と似た手法だ。
アメリカ政府がシリアに対する直接的な軍事介入を諦めた後、ロシア政府と話し合いで問題を解決する姿勢を見せた。ところが、ウクライナでネオコン/好戦派がネオ・ナチを使ってクーデターを実行した後、バラク・オバマ政権はネオコン/好戦派に引きずられてロシアとの戦争へ向かった進み始める。そしてMH17の撃墜に至るのだが、ここでロシアはシリアの時と同じように裏で情報を各国政府へ示し、外交的に問題を解決しようと試みている。それに対してアメリカやEUがどのように反応するかで人類の運命が決まるかもしれない。
ロシア、事件のデーターを提出、EU、米国の反応を待つ - The Voice of Russia
7月22日、ロシアはEUに対し、ウクライナ領で起きたマレーシア機事件に関する客観的なコントロール手段が捉えたデーターのすべてを正式に提出した。提出が行われたのは、ロシア国防省がモスクワでのブリーフィングにおいてロシアの追跡手段がキャッチしたデーターを公表した一昼夜後だった。ロシア軍部はドネツク州領内で事件の前の状況をはっきりと描き出した。
データーを調べたロシア軍部からはキエフ当局に対し、多くの疑問が湧き上がった。
特に、ウクライナのレーダーはなぜ事件の前日と当日、活動を活発化させたのか、なぜ事件後に活動を止める命令が出されたのか?
ウクライナの地対空ミサイル「ブーク」は義勇軍の中隊が掌握するテリトリーの付近にあって、事件の前まで一体何をしていたのか? そして事件後、なぜ即刻退却させられたのだろうか?
ウクライナ空軍の攻撃機、Su25は事件発生の直前に、なぜマレーシア航空機に3−5キロメートルの地点まで接近したのだろうか? そしてどうしてキエフ当局はこの事実を否定しているのだろうか?
キエフ当局はロシアのこうした問いに、すでに2昼夜も経過しているにもかかわらず、一切回答していない。ロシア空軍参謀本部第1作戦部部長のアンドレイ・カルタポロフ中将はモスクワで行われたオフィシャル・ブリーフィングで米国に対してもマレー機事故の状況究明のために原則的に重要な問いを投げかけている。
「米国の代表らの声明によれば、米国にはマレーシア機を撃墜したのが義勇軍側から発射されたミサイルであることを確証づける人工衛星からの映像があるという。だが、この映像を誰も目にしていない。仮に米国側に人工衛星からの映像があるのであれば、今後の検討に付すために国際社会に提出を願おう。偶然の一致なのかどうか不明だが、マレーシア機の事件が起きた時刻と米国の人工衛星がウクライナ領域を観測していた時刻は一致している。」
米国はこの映像を誰にも渡していない。EUにもロシアにも渡していないのだ。提出は22日に行うと約束はしたものの、22日当日、ワシントンで行われたブリーフィングで米国の諜報機関の代表らはマレー機事件に義勇軍とロシアが関与したという証拠を提出できなかった。米大統領府も米国務省も声をそろえ、まさに特務機関がマレー機撃墜の張本人がわかる確信的証拠を提出すると約束していたにもかかわらず、である。一人の諜報員は「我々は名前を知らない。我々は名称を知らない。そして我々はボーイングを撃った人物の国籍がどこのものか、100%の確信はもてない」と語っている。
ブリーフィングで諜報機関職員らが提出したものは人工衛星からの極秘映像ではなく、衛星からの映像といっても情報をしかとは伝えないものであり、それとソーシャルネットからの情報にすぎなかった。そしてこれを根拠に彼らは、マレー機はおそらく義勇軍によって誤って撃墜されたのではないかという説を唱えたのだ。一方で米国特務機関は、ウクライナ政府が公表したインターネット上のマテリアルが信憑性のあるものなのかどうかは、断言できないと認めている。それまで一連の専門家らからは、米国とウクライナの役人らが証拠として引用していた、ソーシャルネットにあがった動画には、明らかにモンタージュされた痕跡が認められるという指摘が上がっていた。
CIS研究所のイーゴリ・シシキン副所長は、こうした米国の態度には意表をつくものはなにもないとして、次のように語っている。
「こうした事の展開は予想の範囲だった。どんな条件下でも、この事件についてどんな証拠をロシアが提出しても、米国はそれを認めようとはしないだろう。ロシアの出す証拠について、米国はそれを公式的にプロパガンダだと言っている。米国はなんの証拠もだそうとはせず、それでも自分の説を曲げようとはしないだろう。どう考えても、そんな証拠は、米国は握っていない。」
米国諜報機関のひとりはブリーフィングで、事件に関するロシアの関与、ないしはロシアがあたかも義勇軍に地対空ミサイル「ブーク」の使い方を教えたという証拠を自分たちの諜報機関は握っていないと認めた。西側はブークがロシアから義勇軍へ移送されたという説を何度も何度も引用してきた。ところがこの諜報員は、米国諜報機関は「ブーク」がロシアとウクライナの国境を超えて移送されたことは確認できていないと認めたのだ。