経済学書:「21世紀の資本」8日邦訳発売 欧米で論争 - 毎日新聞
フランスの経済学者でパリ経済学校教授のトマ・ピケティ氏(43)の著作「21世紀の資本」の邦訳が8日、発売される。詳細な経済データ分析から「貧富の格差拡大は、資本主義の宿命」との結論を導き、欧米で学術書としては異例の大ヒットとなった話題作だ。格差拡大が問題化している日本でも、「ピケティブーム」は到来するのか−−。
同書が話題を呼ぶのは、そのメッセージの鮮烈さのためだ。ピケティ氏は、過去100年以上にわたる経済統計から、土地や株式などの資産から得られる収益の伸びは、国民の所得の伸びを常に上回ってきたことを明らかにした。資本主義社会では、資産を持つ人に富が集中し、持たない人々との格差が広がり続けることになる。特に成熟して低成長になった先進国で格差が拡大しやすい。
現実に「格差」は今や先進国共通の問題だ。ピケティ氏によると、米国では全所得の50%が上位10%の富裕層に集中し、ピークだった1920年代に近づいているという。平等社会と言われてきた日本でも、非正規雇用が過去最高の4割近くに達した。グローバル化が進み、新興国でもできる労働の賃金に低下圧力がかかる。
ピケティ氏は著書で「格差是正のため、所得だけでなく資産に累進課税を」と提唱しており、経済論争に一石を投じるのは間違いなさそうだ。邦訳版はA5判728ページ。5940円。