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再燃するウクライナ紛争

こうした中、ウクライナと親露派それぞれ戦力の強化に努めている。

まずウクライナ軍であるが、1月19日の大統領によって25歳から60歳までの男子5万人を動員が始まり、最終的に最大10万4000人を動員する。例外は、3人以上の子供が居る父親、聖職者、大学生、傷病者などであるが、かつてない大規模動員であることは間違いない。また、志願者があれば女性の動員も排除しないとしている。


装備面では、これまでの戦闘で損耗した分を回復するため、戦車160両を中心とする装甲車両やMi-24武装強襲ヘリコプターやMi-8輸送ヘリコプターなどの近代化改修型などの調達を開始した。

米国はポーランドなど東欧に平時から戦車などの重装備を配備しておき、有事には兵員さえ送り込めば大規模な兵力展開を可能とすることも考慮して調査団を送り込むことを決定した。

一方、親露派武装勢力もこれに対抗する動きを見せている。2月2日、ドネツクの親露派武装勢力ドネツク民共和国」のザハルチェンコ「首相」は、支配地域内で最大10万人の動員を行うことを宣言した。実際にどこまで動員が実施されるかは不明だが、ポロシェンコ政権による動員に対抗する意図があることは明らかであろう。

さらに1月、「ルガンスク人民共和国」は、「空軍」を発足させたことを明らかにした。これはSu-25攻撃機や飛行学校の保有するL-29練習機などから成るもので、ロシア国防省系のテレビ局「ズヴェズダー」によると、Su-25は昨年7月に撃墜されたウクライナ空軍機を再生させたという。

ロシアからの軍事援助は以前から行われていたが、当初はウクライナ軍が使用しているのと同じT-64戦車などに限られていたのに対しT-72B3戦車や「ヴイストレル」装甲車などロシア軍しか保有していない装備も供与されるようになった(あるいはロシアの「義勇軍」と言いたいのかもしれないが、人員だけでなくロシア軍の制式装備が送り込まれているのであれば事実上のロシア軍に他ならない)。


また、最近では、デヴァリツェヴォ市に近いシャフチョールスク市でロシア軍の最新型防空システム「パンツィーリ-S1」が目撃されており、ウクライナ軍が再び大規模航空作戦を行う可能性を考慮してこうした防空システムを展開させていると見られる。

ここに来て戦闘が激化している背景としては、ミンスクでの停戦交渉と並行して支配地域を拡大させ、交渉を優位に進める狙いがあったというのはよく指摘されるところである。親露派は、現在支配下に置いているドンバス東部だけでなく、ドンバス全域を親露派の支配地機として兵力の引き離しなどを進めるよう要求してきたためだ。


今後の焦点として注目されるのは、ドネツク南部のマリウーポリ市である。前述のようにマリーポリ直前まで親露派が迫ったことがポロシェンコ政権に停戦交渉を決断させた大きな要因となっているが、現在のところ、同市はまだウクライナ側の支配下にある。


もしマリーポリにまで親露派が侵攻すれば停戦どころではなく、ロシアとウクライナの全面戦争にまで発展しかねないが、ロシア政府はそこまで事態がエスカレートすることは望んでいないと見られる。ただし、親露派やロシアの民族派にはマリウーポリ「解放」を要求する勢力があることも事実で、1月24日に初めてマリウーポリ市中心部が砲撃を受けた際には(全欧安保協力機構の監視団はこれを親露派の攻撃であるとしている)、俄に緊張が高まった。


ただ、前述のようにロシア政府は全面戦争へのエスカレートは避けたい構えで、この件については沈黙を守っている。