焦点:日銀が大手行考査2年に1回へ、リスクの早期把握へ体制強化 | Reuters
日銀は、金融システムにおけるリスクの分析力強化と考査・モニタリング体制の整備に着手した。その中で、金融システムへの影響が大きい金融機関に対しては、これまで3年程度に1回だった考査の周期を2年程度に短縮することも検討する。近年の邦銀による積極的な海外業務展開によって、リスクがグローバル化・複雑化していると判断。リスクの早期把握に全力を挙げる。
日銀は2%の物価目標達成に向け、量的、質的金融緩和(QQE)を推し進めているが、バブルの兆候など金融面での不均衡は生じていないと判断。金融システムは「安定性を維持している」と認識している。
もっとも、国内の超低金利環境の長期化や企業の信用力改善などを背景に、大手行を中心に海外業務展開が積極化、金融機関全体としてリスクテーク姿勢の強まりがみられると現状を分析。
また、利ザヤ縮小で地域金融機関の基礎的収益力が一段と低下し、金融システムが抱えるリスクは多様化しているとみている。
こうした環境変化を踏まえ、て日銀では、金融システムの多様なリスクを早期に把握し、そのリスクが顕在化しそうな場合に迅速に対処できるよう、金融情勢の分析力の強化や、リスクの大きさに応じたメリハリのある考査・モニタリング体制の整備を進めることにした。
具体的には、マクロ経済や市場動向を踏まえた金融システムの分析に、考査・モニタリングで得た情報を新たに融合させ、半年に1回作成している「金融システムレポート」で、金融システム全体や金融機関経営における課題を新たに抽出。
そこで示された課題を、考査とオフサイトモニタリングの重点項目に位置づける仕組みを導入する。
従来から日銀の強味とされてきた分析と、考査・モニタリングとの連携を強化することで、多角的な金融情勢の把握に役立てる方針。
22日に公表した2015年4月の同レポートでは、金融機関経営の課題として、1)金融機関の積極的な国際業務展開に伴う与信管理や外貨の安定調達、2)大手金融機関におけるグローバルかつ複雑なリスクの把握やストレステストによる検証など「システミックな重要性への対応」、3)地域金融機関の基礎的収益力の低下への対応━━などを挙げた。
これらの課題に基づいて実施する2015年度の考査とオフサイトモニタリングでは、特にリスクが顕在化した場合に金融システムに大きな影響を与える可能性がある大手金融機関の実態把握を強化する。
金融経済情勢の変動などストレスが発生した場合の影響と対応を点検するとともに、経営者との対話も重視。これまで3年程度に1回だった考査を2年程度に1回の頻度とすることも検討する。海外拠点の臨店調査についても、人員や期間を拡充する方針だ。
一方、金融システムが全体として安定を維持する中、地域金融機関についてはオフサイトモニタリングの比重を高める方向。中でも収益力の点検に力を入れる。
金利上昇などダウンサイドリスクを含めた複数のシナリオに基づき、先行き3年程度の収益シミュレーションを継続。人口減少に伴う営業基盤の縮小などを見据え、10年程度を展望した収益見通しについても、経営者との対話をスタートする。
黒田東彦総裁は4月9日の記者会見で、物価と金融システムの安定を「車の両輪」と位置づけ、「今、両者が矛盾するような状況にはなっていない」と語った。そのうえで、金融システムに問題に生じる可能性が出てきた場合に「まず考えるべきはマクロプルーデンシャルな対応であり、中央銀行としては物価の安定を第一義的に考えるべき」との論調が国際的な流れと説明した。
日銀が進める大規模な金融緩和については、金融面の不均衡など副作用をもたらすリスクが、内外の市場関係者の中からも指摘されている。
金融システムが抱えるリスクの早期把握とともに、金融庁とも連携を深めながら、金融機関への注意喚起を含めたマクロプルーデンス手段の活用も視野に入れた体制を整備し、物価目標実現に万全の態勢を敷く狙いがありそうだ。
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150416#1429181016
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150408#1428489755
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150214#1423910645
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140806#1407322163
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140715#1405422204
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140703#1404384150