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コラム:対ロシア制裁の「予期せぬ結果」 | Reuters

ロシア国家統計局によると、2015年1─4月の同国のチーズ生産量は、前年同期比30%増の18万トンとなった。これは、ウクライナ問題でロシアに経済制裁を科している西側にとって、数少ない「予期せぬ結果」の1つだ。


ロシア国内のチーズ産業が隆盛を見せているのは、同国政府が昨年8月、西側による制裁への報復措置として、幅広い食品や農産物の輸入を禁止したからだ。スイス産エメンタールチーズなどを輸入する抜け穴はまだあるものの、愛国心を背景に、国内チーズ生産者は自分たちの手で、イタリア産パルメザンのような各種チーズを作っている。


こうしたチーズ産業の急成長は、プーチン政権の中枢を狙って制裁を科した西側の意図とは程遠い。ただ、他にも起きている予想外の展開に比べれば、気をもむ必要はあまりなさそうだ。少なくとも、プーチン大統領の支持率上昇や、ロシアの経済面での中国への歩み寄りに比べれば、米英独にとって頭痛の種ではないだろう。


経済制裁や封鎖などは、西側政府が使う手段としては最も不完全なものの1つと言える。キューバフィデル・カストロ国家評議会議長や、イランの最高指導者らに聞けばすぐ分かるはずだ。その要因の1つとしては、制裁の有効性を判断するためには、しばしば反事実の証明が求められるからだ。例えば、今年に入ってキャメロン英首相が発した「大幅な制裁強化」の警告により、ウクライナ南部の港湾都市マリウポリが親ロ派の手に落ちるのを回避されたと言うことはできるかもしれないが、そうではない可能性もある。


反論の余地がないのは、制裁が多くの問題を増大させたということだ。筆頭に挙げられるのは、高インフレや深刻な資本不足と相まってロシア経済の急減速を狙った過去1年の原油価格の下落だろう。


2014年3月に対ロシア追加制裁を決定した際、キャメロン首相やオバマ米大統領らは、制裁は一般市民ではなく、プーチン大統領と同大統領の盟友とされる富豪ゲンナジー・ティムチェンコ氏や、ロシア銀行の大株主ユーリ・コバルチュク氏らを狙ったものとしていた。


渡航禁止などの措置は確かに、プーチン政権を取り巻く新興財閥ネットワークの足かせとなった。ただ同時に、一般的なロシア市民も引き続き苦境に立たされている。


世界銀行は先週、ロシアの国内総生産(GDP)は2015年に2.7%減のマイナス成長となり、2016年も0.7%増の伸びにとどまるとの見通しを発表した。


西側資本市場からの締め出しは、ロシア経済の起業家的な活力、言い換えるなら中小企業の力を削いだ。一方で、ロスネフチ(ROSN.MM: 株価, 企業情報, レポート)やガスプロム(GAZP.MM: 株価, 企業情報, レポート)なども国際資本市場からは締め出されたが、こうした大手国営企業は依然として、スベルバンク(SBER.MM: 株価, 企業情報, レポート)やVTB(VTBR.MM: 株価, 企業情報, レポート)に代表されるロシア大手銀行から資金を調達できる。


これが長く続けば続くほど、ロシア経済に国家が及ぼす影響は強くなっていく。それが西側の経済制裁の目的だったとは到底思えない。


また、経済的苦境にもかかわらず、プーチン大統領の支持率は上がっている。調査機関レバダ・センターの先月の世論調査では86%に達した。


一方、西側による経済制裁は、ロシアの目を中国に向けさせた。両国間の貿易が拡大しているのみならず、中国の国営銀行はロシア企業に資金を提供している。


確かに、ロシアの中流層が負わされている痛みの一部は当初から予想されていたことだ。オバマ大統領は昨年3月、制裁を発表後にブリュッセルで行った演説で「安全保障や繁栄、地位は暴力を通じては得られないとロシア国民は認識することになる」と語っていた。


しかし、そのメッセージは完全には伝わっていない。プーチン大統領は、かつてないほど強くなっているように見える。そして、店頭に並ぶロシアの国産チーズの種類は日を追うごとに増えている。