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特集:安保法制成立後のアベノミクス論 (吉崎達彦(かんべえ))

どこに誤算があったかと言えば、確かにアベノミクスは円安・株高をもたらして企業業績を改善した。ところが企業収益が、賃上げや設備投資には向かっていない。だから個人消費は伸びないし、自律的な景気回復には至らない。企業経営者のマインドはなおも慎重だ。おそらく少子・高齢化による国内市場の縮小や、将来に予想される国民負担の増加といった中長期の課題をシリアスに受け止めているからだろう。
この辺り、政府の思惑とはすれ違いがある。アベノミクスは「まずデフレからの脱却を」と考える。ところが「期待に働きかける」政策を採っていると、どうしても近視眼的にならざるを得ない。

こんな調子ではアニマル・スピリッツを発揮するどころの騒ぎではない。賃上げも、政府の機嫌を損ねない程度にやっておこう、ということになってしまう。

おそらく「名目GDP 600兆円」という目標は、デフレ脱却に向けて「期待に働きかける政策」の一環なのであろう。だから具体論がないのも当然である。

加えて今後の景気には、「中国経済の不安」がのしかかってくる。中国人観光客によるインバウンド消費はあいかわらず好調が続いているようだが、少なくとも対中輸出拡大による追い風は、期待できないと心得ておく必要があるだろう。
最近は、貿易の伸び悩み(スロー・トレード)が世界経済の減速の一因となっている。そのことは、今週のThe Economist誌も取り上げるところになっている(本号P7の”Becalmed”を参照)。


さまざまな理由が重なって、21世紀最初の10年間のような「貿易が世界経済を牽引する時代」は既に去り、今は「世界経済が伸びる程度にしか貿易量が増えない時代」になってしまった。
思えば、中国が「世界の工場」として成長を続けていく過程では、中国とそれ以外の国の貿易が順調に伸びた。かくして中国は世界第2位の経済大国となり、日本も含め約100か国にとって最大の貿易相手国となった。
ところがサクセスストーリーは無制限には続かない。中国における資源消費量はさすがにピークを過ぎたらしい。これまで輸入してきた工業製品の部品も、国内で揃うことが多くなってきた。別の見方をすると、中国経済はもはや「輸出主導型の成長」を追い求められない。他方、ブラジルや豪州など対中輸出のお蔭で経済成長を続けてきた資源国は、「冬の時代」を迎えることになる。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150925#1443177375
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150924#1443090858
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#アベノミクス