アングル:欧州銀行株、金融危機開始時上回る猛烈な売り | Reuters
欧州の大手銀行株に対する売りの動きは、2008年に金融危機が始まった時点よりも激しくなっている。年初来で欧州銀の時価総額は25%近く、金額にして2400億ドル超が失われた。そして直面しているのは、もつれ合ったさまざまなマクロ経済面の懸念が、8年間にわたるコスト削減やバランスシート健全化、リスク回避戦略の成果を台無しにしかねないという厳しい現実だ。
原油価格下落や中国経済の減速、世界的な金融市場の混乱などは、投資家を不安にさせている多くの要因のほんの一部にすぎない。
これとは別に、欧州銀行セクターは不良債権のために資本不足に陥っているのではないか、あるいはマイナス金利で純利ざやが圧迫されて、預金者に手数料を課さなければならなくなるのではないか、といった懸念もある。
銀行がこれら多くのハードルを乗り越える必要があるとすれば、株主へのリターンが上向くのははるか先の話に見受けられる。
アングル:ドイツ銀、株価回復はいばらの道 投資家は信頼喪失 | Reuters
30年ぶりの安値に沈んだドイツ銀行(DBKGn.DE)の株価を押し上げるという同行経営陣の課題は、極めて実現が困難だ。資本レベルに問題はないと強調しても、投資家の信頼感改善効果はほとんど見られず、ほかに株価回復を促す対策の当てはない。
2008年の金融危機からの立ち直りという点で、ドイツ銀はライバルに後れを取ってきた。一連の訴訟解決のために数十億ドルの罰金を支払う必要があったことや、システムの老朽化などが足かせになったためだ。
肥大化した投資銀行部門に対して痛みを伴うリストラに着手したのは欧州の大手行では最も遅く、こうした取り組みがもたらすコストのために、2015年決算で過去最大の赤字を計上した。
こうした中でドイツ銀の株価は年初来約40%下落し、欧州銀行株セクターの売りを先導している。
投資家は、ドイツ銀が昨年10月に発表した2年で経営を立て直す計画について、世界経済の見通しが悪化し、マイナス金利が広がるこの局面で、果たして経営陣が実行できるかどうか不安を抱いている。
株式保有比率がトップ10に入るある大株主は「投資家はドイツ銀への信頼を完全に失った」と語り、同行にのしかかる問題の大きさを考えれば、株価の早期回復は見込み薄だと付け加えた。
また複数の投資家は、ドイツ銀が規制面や訴訟関連の問題に対応するために、2010年と14年に200億ユーロ(226億ドル)近く増資したにもかかわらず、なお資本調達が必要なのではないかと危惧する。
シティのアナリストチームは先週の調査ノートに「ドイツ銀は最大70億ユーロの資本不足に陥っており、訴訟問題の行方次第では、既存の株式を非常に希薄化させる規模の増資が必要になる可能性がある、というのがわれわれの見方だ」と記した。
ドイツ銀はロイターからの資本ポジションに関する問い合わせには答えなかった。ただクライアン共同最高経営責任者(CEO)は9日に従業員に向けて、同行の資本ポジションは「絶対的に強固」だと顧客に安心感を与えることができる、とのメモを送付した。
クライアン氏はこのメモで「市場はわれわれの訴訟関連の引当金が不十分ではないかとみているが、私はそうした懸念にくみしない。今年の訴訟関連引当金を積み増す必要があるのはほぼ確実だが、それは既にわれわれの財務計画に織り込まれている」と強調した。
しかし複数の投資家からは、他の大手行が次々に金融危機モードから抜け出していく中で、同行が黒字転換や株価安定といった成果を示すための時間的余裕はなくなりつつある、との厳しい声が出ている。
<険しい道のり>
別の大株主も、ドイツ銀を取り巻く不確定要素を好意的に解釈できる余地はないと言い切り、投資家は今や自らの疑念を行動で示しつつあると説明した。
ドイツ銀の監査役会に対しても不信感が出ている。この大株主は「財務面での監査役会の無能ぶりは残念だ」と話した。その上で、アッハライトナー監査役会会長への支持も薄れつつあり、新しいスタートを切るには新しい顔が必要だが、これといった後継候補が見当たらないと嘆く。
ドイツ銀の時価総額は株価急落で1年前のほぼ半分の190億ユーロ前後になり、通常なら買収の標的になってもおかしくない。
ただドイツ与党の複数の関係筋によると、ドイツ銀は国家を代表する存在の1つと多くの国民にみなされているため、政府から暗黙の保護を得ているという。
関係筋の1人は「どこかがドイツ銀の買収に乗り出せば、政府は介入する」と述べた。
クライアン氏も1月終盤の年次総会で「われわれはドイツ銀が買収される可能性についてはあまり心配していない」と楽観的だった。
ただしこれは株価が現状近辺からしばらく浮上しないことを意味すると、一部のアナリストは指摘する。クライアン氏にとっては、投資銀行の縮小によるコスト削減や非中核資産売却で成果を出さなければならないというプレッシャーがますます強まる。
モルガン・スタンレーのアナリスト、ヒュー・ファン・ステニス氏は、ドイツ銀の株価は国際的にシステム上重要な金融機関で最も割安だが、それでもそう簡単に反発しないとの見方を示した。
コラム:問題児に転落したドイツ銀のハイブリッド債 | Reuters
ドイツ銀行(DBKGn.DE)の利払いをめぐる騒ぎを機に、金融規制の看板娘だったはずの新型ハイブリッド債が、一転して問題児に姿を変えようとしている。
ドイツ銀は8日、「CoCo債(偶発転換社債)」の一種であるAT1債(その他Tier1債)の利払いが遅れるという懸念の火消しに努めた。同行がこうしたハイブリッド債の利払いを中止したとしても、本来なら一大事ではないはずだ。同行は昨年秋、普通株の配当支払いを2年間中止すると発表しているし、AT1債はそもそも、同行が健全性を保ちながら損失を吸収するために設計されたものだ。2008年に世を騒がせたようなハイブリット証券との違いはここにある。ところが、新型ハイブリッド債の損失吸収機能が発動(トリガー)される可能性があると知って、市場のボラティリティは抑えられるどころか、かえって高まっているのだ。
銀行株は経済成長への懸念を背景に下落し続けてきた。その波がついに、AT1債にまで及び始めた格好だ。ドイツ銀は収益率が低く、資本が比較的薄い上、ドイツのAT1債会計の特殊性がもたらす不透明感も加わり、とりわけ売られやすい状態にある。
ドイツ銀の永久債(AT1債)は表面利率が6%だ。1月初め、同債の予想償還期限は2022年で、利回りは7%前後だった。しかし株価が下がると、投資家はAT1債に株式並みの利回りを要求するようになり、価格は下がった。利回りが上がると、ドイツ銀が2022年にこの債券を償還(コール)しない可能性が高まるので、予想償還期限は伸び、投資家の損失は大きくなった。そして最後に利払い停止の懸念が再燃し、短期的なキャッシュフローが減っているのではないかとの懸念が広がった。最初は比較的短期の債券であるかに見えた証券が、長期のゼロクーポン商品に変化する恐れが出てきたわけだ。年初に額面の93%だった価格は、8日には72%まで下がった。
規制当局、投資家の双方にとって問題なのは、こうした一切合財が無限ループを生み出していることだ。AT1債の価格が下がったとき、投資家は売る先がほとんど見つからない。銀行は、仲間の銀行が発行した低落した債券のマーケットメークなど行いたくないし、ハイブリッド債の大口の買い手であるアジアのプライベートバンクは、8日は春節で休みに入っていた。投資家は仕方なくクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を取引した。この結果ドイツ銀のシニアCDSスプレッドは270ベーシスポイント(bp)超と、ユーロ圏債務危機以来の水準に上昇した。とはいえ、ドイツ銀が破綻する可能性はまず考えられない。同行の有形資産の簿価は530億ユーロと、2011年に比べて40%も増えている。
AT1債の死のスパイラルは、現在の市場の激動に鑑みれば小さな構成要素に過ぎない。しかしこの一件は、株式を債券であるかのように装うことのリスクを浮き彫りにした。規制当局は、新顔のハイブリッド証券が危機前のそれよりも損失吸収に役立つと期待した。確かに証券自体の損失吸収能力は高まったが、市場はそうではない。
ドイツ銀:利払いに対応できる資金力あり−高まる懸念の払拭図る - Bloomberg
ドイツ銀行は債務返済のための十分な資金があることを示し、投資家や従業員を安心させる必要に迫られた。大手銀行がこうした状況に置かれたのは少なくとも4年ぶり。
ドイツ銀は8日、今年と来年の高リスク債の利払いに十分に対応できる資金力があると発表。マルクス・シェンク最高財務責任者(CFO)はドイツ銀のウェブサイトに掲載した従業員宛て文書で、「当行の資本とリスクのポジションは引き続き強固だ」と強調した。
この発表に先立ち、クレジットサイツのアナリスト、サイモン・アダムソン氏は8日のリポートで、ドイツ銀の営業利益が期待外れであったり、訴訟コストが予想より膨らんだりした場合には、17年の利払い能力が懸念されると指摘していた。
同行の劣後債を5年間保証するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッドは今年に入り2倍以上に上昇。株価は解散価値の3分の1程度に沈んでいる。変動の激しい市場環境で収入が脅かされ、規制当局による調査継続で法律費用の増加が見込まれており、ジョン・クライアン共同最高経営責任者(CEO)が打ち出した経費削減と資本増強の計画に対する信頼を得られていない。
ドイツ銀や欧州でライバルのクレディ・スイス・グループ、バークレイズなどは、証券部門の野心的改革に着手したものの、世界的な市場の波乱で大きな痛手を受けている。中国の景気減速や原油安を受け、安全志向の投資家が処分売りをしていることも、投資銀行部門の収入を圧迫。一部事業からの撤退コストを押し上げ、最終的により多くの利益を資本金に組み入れる取り組みが阻まれている。
8日の発表資料によると、ドイツ銀は2016年に約10億ユーロ(約1300億円)の支払い能力があり、「その他Tier1債」(AT1債)で4月に予定する約3億5000万ユーロの利払いを十分にカバーできる。中国の華夏銀行の持ち株を売却して得る資金などに支えられ、17年の支払い能力は43億ユーロ程度の見通し。17年の見通しは16年の損益の影響を除いたベース。
ドイツ銀の株価はこの発表を受けて米国市場で2%近く反発し、結局8%安で同日の取引を終了。8日のドイツ市場では9.5%安と、約7年で最大の下落となり、1992年以来の安値を付けていた。一方で、クレジット市場での急落に歯止めをかける効果はなく、ブルームバーグの集計データによると、同行の高リスク債の保証コストは2011年の欧州債務危機の最悪期以来の高水準に達した。
11年には米銀大手のバンク・オブ・アメリカ(BOA)とモルガン・スタンレーが欧州債務危機を受けた市場のボラティリティを踏まえて、投資家を安心させる措置を講じた。BOAは同年8月、資産家ウォーレン・バフェット氏からの50億ドルの出資を発表。同年10月には三菱UFJフィナンシャル・グループがモルガン・スタンレーとの提携に強くコミットしているとの見解を表明した。
Business: Washington Post Business Page, Business News
ドイツ銀、社債保証コストの上昇止められず−チャート - Bloomberg
ドイツ銀行の社債デフォルト(債務不履行)に備える保証コストが8営業日連続で上昇した。同行は高リスクの社債利払いに対して今年と来年の履行に十分な資源があると強調したが、劣後債および優先債を保証するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッドはいずれも、約3週間で2倍になった。
ショイブレ独財務相:ドイツ銀行「懸念していない」 - Bloomberg
ドイツのショイブレ財務相はドイツ銀行について、懸念していないと述べた。国内最大の銀行であるドイツ銀行をめぐっては資本や流動性の水準に対する不安が浮上、株式・債券とも売り込まれている。
ショイブレ財務相は独仏財務相会談後にパリでブルームバーグ・テレビジョンのインタビューに応じ、「いいや、私はドイツ銀行を懸念していない」と発言。それ以上詳しくは触れなかった。
ドイツ連邦銀行(中央銀行)のバイトマン総裁も質問に答え、「現在目にしている金融市場のボラティリティーは、(世界経済の)不透明感や成長に対するリスクの表れだ」と述べた。ドイツ銀行についてはコメントを控えた。
German Finance Minister Schaeuble Has 'No Concerns' Over Deutsche Bank - Bloomberg Business
欧州の銀行の資金調達に不安なし、危機再来はない−ゴールドマン - Bloomberg
欧州の銀行には預金の流入によって「潤沢な流動性」があり、資本バッファーも厚くなっているため、金融危機の再来はない−。ゴールドマン・サックス・グループがリポートでこのように分析した。
ゴールドマンは9日のリポートで、これまでのところドル建てでもユーロ建てでも欧州の銀行が資金調達に苦労する兆候は見られず、昨年の預金増加で域内銀行の流動性は強化されていると指摘。欧州中央銀行(ECB)からの借り入れが2012年のピーク時に比べ減少している上、金融危機が始まって以来8000億ユーロ(約103兆4300億円)の資本を調達したことを挙げた。
欧州の銀行株はドイツ銀の社債利払いをめぐる懸念をきっかけに8日に急落した。ゴールドマンは業界の利益見通しが融資の伸び悩みや信用の質の悪化傾向などによって「弱まっている」としつつ、昨年10−12月(第4四半期)の決算は株価下落の十分な理由にはならないと説明した。
Goldman Says Europe Bank Funding Means No Crisis Repeat - Bloomberg Business