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» そして日本国債は暴落し、地方アントレプレナーシップの時代が訪れる。 (連載「パックス・ジャポニカへの道」) | IISIA 株式会社原田武夫国際戦略情報研究所

何が「壁」なのかといえば、要するに新しいものを一切受け入れまいという態度なのである。そしてありとあらゆる関係団体が実質的に“つるんで”おり、最後は親方日の丸よろしく、「県庁が後援に廻るのであれば私たちも支援します」と判断を官公庁にゆだねてしまう。それでは官公庁の側がそうやすやすと支援するのかといえば、事実上の大統領制である知事が「政治主導」で当該民間プロジェクトを推すと腹を決めない限り、絶対にそうはしないのである。結果として、よかれと思って提案することが水泡に帰す可能性すら出て来るのである。

以前このコラムでも書いたことなのであるが、要するに我が国地方には戦後、壮大な規模で「利権構造」が築かれて来ているのであって、これにメスを入れられるのが怖いのである。表向きはどうであれ、「蟻の一穴」であり、この「利権構造」の一端を見られてしまっては困るのだ。したがって絶対に中によそ者は入れないということになってくる。だが、問題はそもそもこの「利権構造」を存立せしめてきた事情が全く変わったということにこれら地方人士が気付いていないこと点にあるのだ。簡単にまとめていうならばこういうことだ:


―まず、戦後の我が国経済は外務省を主導とした「日米同盟墨守」に依ってきた。そしてそのことを通じて圧倒的に有利な交易条件(強烈な「円安ドル高」レートなど)を確保し、輸出攻勢を世界全体にかけることを通じて、巨額の国富の我が国への移転を行って来たのである。これによって裨益するのはまず、我が国において輸出を担当する一連の大企業とその周辺に位置する大企業たちであった。そしてそこに務める「サラリーマン」たちから源泉徴収で根こそぎ税金が国庫へと収められるのである


―次に、我が国国内において新産業セクターが創出される度に経済官庁たちが次々に「規制」をかけていく。「国民生活の安定」「国民の安全」などを確保するためというわけだが、その実、こうした規制に従う企業とそうではない企業を線引きするためにこうした施策が使われてきた。そして前者は「業界」とみなされ、その頂上団体が公益法人として認められる中、当該規制官庁の幹部たちがそこに“天下り”を行うことになる。そして「業界」に対しては多額の補助金が支払われる。無論その原資は先ほどサラリーマンたちから源泉徴収された税金である


―もっともこの様にして作られた「業界」で取引される価格は補助金が上積みされている分だけ高くなるのであって、マーケットにおける実勢価格とは大きく異なるのだ。したがって「実勢価格」で取引したいと普通は考える市場参加者たちのために、あえて法を破ってこれを行う者たちがとりわけ地域経済においては出て来るのである。いわゆる「反社会的勢力」であり、別名“アウトロー”と言われる者たちだ


―この様にして公定価格と実勢価格の差が出て来ると、結果としてその差額が浮いてくるわけだが、実のところ先ほどの「業界団体」(シロ)と「アウトロー」(クロ)は地元政治家たちを結節点としてつながっているのである。そして、ここでいう差額はこれらの者たち全員に分配されていくことになる。無論、関係した官公庁の者たちも”天下り“や”タクシー券によるキックバック“といった形であの甘い汁を吸うことになるのである


―加えていうと、そうした「ダークなマネー」は通常ならば置き場所に困るわけだが、これまではそうはなって来なかったのである。なぜならば地域金融機関がまたぞろ、そうした事実を知りつつも、”知らないふり“をしながら預金として受け付けてきた経緯があるからだ。無論、こうした「ダークなマネー」は普通ならばその引出しにあたっても問題が生じるわけだが、何分全員が全員、”グル“なのでそうした問題は生じないのである。「地域経済・社会の発展のため」という名目でそれは費消され、闇から闇へと消えていく

端的に言うならばこういうことだ。―――名目金利を引き下げ(=マイナス金利の導入)、その一方でインフレを本格展開することにより(=商品価格の着実な上昇)、両者の差である実質金利を大いにマイナス化させ、もってイノヴェーションを次々に起こさせることにより脱出口を探ろうというのが、中央銀行家たちの戦略なのである。ところが肝心のイノヴェーションがそれでも出て来ないとなると話は全く違ってくるのである。インフレの本格展開がやがて「ハイパーインフレーション」へと転ずる懸念にまで至るのであれば、今度は名目金利を引き上げなければならないことになる(=米政策金利引き上げ)。すると公的債務残高が多い国々から容赦なく「利払い滞り(懸念)」を理由に今度は“デフォルト(国家債務不履行)”へと陥ることになるのである。

そこで最も損害を被るものの一つが件の地域金融機関である。大量の「ダーク・マネー」を含め、これら地域金融機関の抱える預金はその実、「日本国債」として保有されている。しかしその肝心の「日本国債」が紙屑になるというわけであるのだから、大惨事なのである。既に一部のメガバンクは自前の「仮想通貨」を創り出し、価値の保全に務め始めているが、地域金融機関にはそのようなあらかじめの発想も、余裕もないのである。そもそも地域経済が依存している地方債が、我が国の“デフォルト(国家債務不履行)”によって機能不全に陥り、地方自治体の連鎖倒産へと至る中にあって、地域金融機関が選ぶことができる道は二つしかない。これら先進的なメガバンクへの吸収合併から、それでも何もせずに座して死す(=倒産する)かのいずれか、である。もう、誰も助けてはくれないのである。

これで私たちの研究所が仙台を皮切りに「地域グローバル経営者・起業塾」の開催に向け鋭意努力をしている本当の理由をお分かり頂けたのではないかと思う。天から降って来るのを待つのではなく、それぞれの地場において「富の源泉」となるアントレプレナーシップを急ピッチで育むこと。そしてそのことを通じて我が国の国家財政が何時如何なる形で破綻するにせよ、それでも持ちこたえられるだけの地域経済を創り出すこと。これこそがこのプロジェクトの目的なのである。


「目的はよく分かった。しかしそうではあってもそこで得られる“富”が日本円であれば、結局のところ我が国の“デフォルト(国家債務不履行)”に巻き込まれてしまうのがオチなのでは」


そう考える読者も大勢いるのではないかと思う。心配することなかれ、日本銀行金融庁といった当局はこの点について、分かる人には分かるように既に抜け道を創っているのである。「仮想通貨」である。端的に言うならば、世界中で危機が起きる度に価値を挙げているのが仮想通貨であり、とりわけその中でも最大の規模を誇る「ビットコイン(Bitcoin)」なのだ。P2Pで価値保全がなされる仮想通貨であれば、国家財政がどうなっても関係はないのである。そのことにやがて人々が気付き、大量のグローバル・マネーが仮想通貨へとなだれ込むことにより、その価値は着実に急騰していく。そうである以上、我が国の地域経済の次の担い手となるべきアントレプレナーたちがその支払い手段を「仮想通貨」にしないという理由がどこにあるだろうか。そして彼・彼女らこそ、これまでの戦後日本が築き上げてきた「利権構造」を源泉とするダーク・マネーとは無縁の存在として、未来の我が国を創り上げる真のリーダーシップへと飛翔することになるのである。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160611#1465641418
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160610#1465555142