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焦点:南シナ海裁定に「無力化」の恐れ、腰砕けの米外交戦略 | ロイター

南シナ海の領有権をめぐる中国の主張に関して仲裁裁判所が今月裁定を下すまでの間、米当局者らは、もし裁定を中国が無視するなら、同国の国際的評価に「ひどい」損失を与えるべく、各国と共同戦線を組むことを検討していた。


しかし、7月12日にオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が、少なくとも文面上は中国にとって屈辱的敗北と見られる判断を発表してからわずか2週間後、米国のそうした戦略は白紙となったと思われる。仲裁裁判所による裁定は、その重要性を失う危険にさらされている。


米当局者らは今月に入り、アジア太平洋諸国や欧州連合(EU)を含む他の地域の国々に対し、仲裁裁判所の裁定は拘束力を持つべきであることを明確にする重要性を繰り返し語ってきた。


「これは国際法で、非常に重要であり、全ての当事者に拘束力があると、われわれは協調し声を大にして訴える必要がある」と、2月当時、米国防総省の副次官補(南・東南アジア担当)だったエイミー・シーライト氏は語っていた。


4月には、アントニー・ブリンケン米国務副長官が、ハーグ裁定を無視するなら、中国は自国の評価に「ひどい」ダメージを被るリスクを冒すことになると語った。


仲裁裁判所に異議申し立てを行ったフィリピンの弁護団を率いた弁護士は、仲裁裁判所による裁定を拒否することは、中国が法の支配を尊重しない「無法国家と宣言しているようなもの」との見方を示した。


世界で最も交通量の激しい通商ルートの1つである南シナ海の大半に主権が及ぶとする中国の主張は、航行の自由と国際法にとって脅威であるとするフィリピンの提訴を米国は支持した。


だが、仲裁裁判所が中国の主張を受け入れない裁定を下した後、共同戦線を求める米国の呼びかけは頓挫したように見える。裁定は拘束力を持つべきとの米国の主張に呼応したのは、わずか6カ国だった。


そのなかにはフィリピンも含まれるが、中国が裁定を受け入れた場合に自国も利益を得る可能性がある他の当事国らは入っていない。


一方、中国は今週、外交的大勝利を得た。東南アジア諸国連合ASEAN)外相会議は25日発表した共同声明で、米国が要求していた南シナ海の領有権問題における仲裁裁判所の裁定について言及しなかった。言及するよう求めていたフィリピンが、中国の盟友カンボジアからの反対を受けて、自らの要求を取り下げたのだ。


また、英国の離脱に揺れるEUは15日、仲裁裁判所の裁定に関する声明を発表したが、中国に直接言及したり、裁定には拘束力があると主張したりすることは避けた。


<「脚注」程度の重要性>


ケリー米国務長官は27日、ASEANが法の支配を支持する共同声明を発表したことに満足の意を表し、仲裁裁判所の裁定に全く言及しなかったことで、同裁定の重要性が損なわれるわけではないと述べた。


ケリー氏はまた、裁定には法的拘束力があるため、その重要性を失わせることは「不可能」だと強調した。


しかし専門家によれば、米国が友好国や同盟国と協調してこの問題を効果的に推し進めることに失敗したせいで、なおさら裁定が無意味になるリスクに現在直面しているという。


「裁定が脚注程度にすぎないと見られるようになることを懸念すべきだ。なぜなら、裁定の影響力は国際社会によってつくられるものであるからだ」と、米戦略国際問題研究所(CSIS)の南シナ海専門家、グレッグ・ポーリング氏は指摘。


「国際社会は何も言わない、ということを表明した。『われ関せず。中国をこうした基準に保たなくていい』というのが、コンセンサスのようだ」


シンクタンクヘリテージ財団の中国専門家であるディーン・チェン氏は、オバマ大統領の任期も残すところあとわずかで、11月に大統領選を控える米国は、戦略的ライバルであり不可欠な経済パートナーである中国に対し、これ以上の強硬路線は取りたくないように思われると語った。


「われわれが目にしているのは、物理的に、政治的に、違法に、外交的に、南シナ海へ猛進している中国に対し、ほとんど何もしない米国の姿だ」と、チェン氏は述べた。


オバマ政権が比較的受け身である理由の1つに、仲裁裁判所の裁定後に、南シナ海で中国が埋め立てを拡大したり、防空識別圏を設定したりと事態が大きくエスカレートするのを阻止したい考えがあった可能性が挙げられる。


中国はこれまでのところ、強硬な発言をするにとどめているが、専門家や当局者らは、9月に20カ国・地域(G20)首脳会議を主催した後に中国が大胆な行動に出る可能性を懸念している。

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