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http://d.hatena.ne.jp/d1021/20161111#1478860669


 まずは、アベノミクス下の経済動向の特徴を、過去の政権と比べながら探ってみよう。その第一歩として、株価(日経225平均株価)の反応と実体経済(実質GDP)の推移をみておこう。バブル絶頂期にあった竹下政権以降の各政権について、政権の初期時点の水準を100として株価と実体経済の動きを描くと、安倍政権の特徴として両者の大幅な乖離が見て取れる(図表1)。

実体経済の出遅れという点で、とりわけ個人消費の足取りの鈍さが目立つ。先と同様、竹下政権以降の各政権のスタート時点を100として、実質民間最終消費支出の推移を比べると、直近7〜9月期の水準は99.8にとどまる(図表2)。


 つまり、実質(数量)で評価した民間最終消費支出(個人消費)は、アベノミクスが始まった時よりも今の方が低い。家計が生活防衛姿勢を取る姿が色濃くみられる。

 では、安倍政権自らは、アベノミクスをどのように評価しているだろうか。しばしば指摘されるのが有効求人倍率の上昇や失業率の低下、つまり労働力の需給ひっ迫である。


 失業率を例に挙げよう。安倍政権下で失業率が下がった(つまり改善した)のは確かに事実である。直近9月には3%まで下がり、ほぼ完全雇用が実現されている(図表3)。


 それでも2点、問題がある。


 第1に、そもそも失業率の低下(改善)が始まったのは2009年後半、つまり民主党政権が始まった頃である。ちなみに有効求人倍率の上昇についても同様である。したがって、アベノミクス下で失業率の低下が始まったわけではない。


 第2に、では民主党政権下で、失業率や有効求人倍率の好転につながった政策とは、具体的に何であったろうか。筆者には残念ながら思いつかない。つまり、足元にかけての失業率の改善を、そもそも政策の成果と位置付けること自体に問題がある。


 むしろこの間の失業率の低下は、高齢者の退職増(特に1947〜49年生まれの団塊世代が65歳を越えたことは無視できない)や少子化による労働市場への新規参加者の減少など、「人口動態上の課題が表面化した姿」というべきではないだろうか。


 つまり、とても政策の成果とは言えない現象が、「政策の成果」と位置付けられてしまっていることが2つ目の問題である。

 人口動態上の課題が表面化した姿が失業率の低下(あるいは求人倍率の上昇)とすれば、これは本来「完全雇用」(=政策の成果)ではなく「人手不足」(=問題の表面化)と言うべきである。実際、昨今の「完全雇用」は4つの問題を内包する。


 第1に、今回の完全雇用はほぼ「ゼロ成長」の下で実現してしまっている。逆に言えば、日本の労働市場の観点に立つと、日本が安定的に実現できる成長率はゼロ%ということになる。安倍首相は、アベノミクスが成功した暁には実質2%成長が実現するとしていたはずではないか。やはり、今回の完全雇用は、「政策の成果」ではなく、「問題の表面化」である。


 第2に、人手不足の主体が圧倒的に非製造業となっている(図表4)。確かに、製造業も人手不足ではあるが、鉱工業生産(国内での鉱工業による生産量)が、超円高であった2011〜12年の水準さえも越えられない中、製造業における人手不足の度合いは非製造業に比べて低い。一般に、非製造業は労働集約的(labor intensive)であるがゆえに、一定の景気回復が雇用の増加につながりやすい。


 しかし、その裏側では労働生産性(labor productivity)の低下が生じる。そのため「労働生産性×労働分配率」に一致する実質賃金は、非製造業主導の人手不足の下では上昇ペースが鈍くなる。


 第3に、2012年頃から労働参加率の上昇が女性に限られる(図表5)。これは、上述したように、その間の人手不足が非製造業主導であったことに起因する。一方、団塊世代(1947〜49年生まれ)が65歳を越える中、高齢の男性は退職期を迎えており、男性の労働参加率が今後高まる余地は限られる。こうした中、ついに日本の女性労働参加率はほぼ米国に並んだ(図表6)。


 もはや日本の女性の労働参加率を、国際比較の観点で低いということはできない。確かに、スウェーデンやドイツなど一部の欧州諸国と比べるとまだ低いが、そこに追い付くには「働き方」の抜本的かつ徹底的な変革が求められる。


 第4に、非製造業が人手不足を牽引する中、いわゆる非正規の就業形態(無期限、フルタイム、直接雇用という3条件のうち1つでも欠く雇用形態)が増えている。これも一定の失業率に対応する賃金の上昇ペースを鈍らせる。


 なおこの点に絡んで、1点付言しておきたい。世の中で言われる「非正規問題」は本来、賃金体系の問題である。非正規という雇用形態自体は女性の労働参加率が非常に高い欧州でも広く存在する。


 これを誤認して、本来「賃金体系の問題」であるにも関わらず、非正規から正規へのシフトを促すという具合に「雇用形態の問題」に転化してしまうと、おそらく企業はますます日本から離れるであろう。

 以上の4つの問題が化学反応した結果が、労働市場に見るフィリップス曲線(失業率と賃金増減率の関係)の下方シフトである(図表7)。つまり、一定の失業率に対応する賃金の上昇率は、アベノミクスの前より後のほうが低くなっている。


 この背景として、企業や家計の予想インフレ率が未だに低い中、賃金の引上げに踏み込みにくい環境が挙げられる。無論、こうした状況を打破すべく、日銀は大規模な金融緩和を進めてきた。しかし、日本が直面する構造面への対応が遅れている。とりわけ上述した労働市場の抱える4つの課題への対応が早急に求められる。


 4年目を終えつつあるアベノミクスはあまりに金融緩和(第1の矢)に頼りすぎた。しかし、この「処方箋」は十分成果を出していない。今まで日銀は「処方箋自体は正しい、単に薬の量が少ないだけだ」と言わんばかりに、追加緩和を繰り返してきた。


 一方、筆者を含む多くのエコノミスト労働市場改革こそが構造改革(第3の矢)の本丸であると主張してきた。しかし、そこへの対応は大きく出遅れた。問題は「処方箋」ではなく「診察」にある。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20161120#1479638506

#経済統計#リフレ#アベノミクス