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 去年、自主廃業した中小企業はおよそ3万。なんと、その内49%が黒字経営だったという。多くの客に愛され、儲かっているにも関わらず、後継者不足を理由に廃業を選択してしまう中小企業が今、急増しているというのだ。

 墨田区にある岡野工業は従業員3人の小さな町工場ながら、世界に名の知られる、年商8億円の優良企業だ。30もの特許を持っており、大手自動車メーカーの部品製造を受注する。13年前には大手医療メーカーから依頼され、蚊が血を吸うための口器と同じ太さ3ミクロンの注射針を開発。「痛くない注射針」として、赤ちゃんや糖尿病患者のインシュリン注射などに使われている。この注射針をつくれるのは、世界でも岡野工業だけだという。

 小泉総理も視察に訪れた、日本が誇るものづくりの技術を持つ岡野工業も、後継者問題に直面している。岡野雅行氏社長には2人の娘がいるが、ものづくりには興味がないという。誰かに継がせる予定もなく、現在84歳の岡野社長が85歳になった段階で廃業することを決めた。

 岡野社長は「跡取りがいないってのは悔しいよね。でもやりたいこと全部やった。何も未練はない。あとは趣味の車に乗って」と笑う。「技術屋、職人って、ほとんどいなくなるだろうね。だってうちの近所でもみんな辞めてっちゃうんだ」。

 後継者問題に詳しい株式会社ストライクの荒井邦彦氏は「20年前は事業承継・後継者といえば8割が身内だったのが、今は6割まで下がっている。黒字でも銀行から借り入れる場合があり、社長が連帯保証人になっているところが大多数。その状態で会社を子どもに継がせるのは酷だと考える経営者も多い」と指摘する。

 町工場で働く職人や地方の中小企業が後継者不足に悩む背景には、大学全入時代が到来したこともあるようだ。つまり、大学に入り大企業を目指すというレールが当たり前になり、日本経済を支えてきた中小企業や町工場を担おうとする若者が少なくなったというのだ。

 岡野社長も「今の教育じゃ無理。昔は中卒で職人になったから。大学出てからじゃもう遅い。学問で飯食うんじゃないんだから。修学旅行で"見学に来たい"っていう子は、学校が大嫌いで、学校からも"お前は来んな"って言われてる生徒たちなの。優秀な奴はお台場とかに行っちゃう(笑)。でも、みんなやる気は十分だったね。見た瞬間に"おじさん、これ1日に何本できんの?どのくらい売り上げるの?"って。"お前、税務署か?"って(笑)。でも、育成するのは難しい。教える技術を持ってほかに出ちゃう、じゃあ教えないほうがいいじゃないとなる。昔は学校出て、20歳までは年季奉公。その後はフリーエージェント。でも今だと、みんな技術を持って逃げていくからね。教える気にならないよ」と話す。

 岡野社長は「うちに全部図面があるけど、役所に持って行って"みんなに配ってくれ"って言ったけど、予算がないって言われたよ(笑)。うちみたいな技術は、大企業でも絶対できる。人もいる。やればできるけどやらないだけ。もし失敗したら飛ばされたり、ボーナス無くなっちゃうって思うから、できないできないって言ってた方がいい。俺は何回も何回も失敗したよ。自分は学歴がないから技術で勝たないとダメだと思っているから、失敗を恐れずチャレンジできた。大企業もチャレンジしないとダメだね。先頭に立ってる人が犠牲になんなきゃ。自分だけがいい思いしようっていうのはだめ。それだけだね」と語った。