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【人、瞬間(ひととき)】あの木片 宮大工棟梁・小川三夫さん(61)(上)

師匠は「これはこうやって、ここはこう」というような教え方はしなかった

 ただ黙って刃物を研ぎ、誰もいないかのように一人で木を扱う。その姿を手本に、ひたすらマネをするというのが修業だった。

 そんな小川に、西岡がくれたのが、一片のかんなくずだった。研ぎ方、刃の調整、かけ方…あらゆる技術が完璧(かんぺき)でないと、こうはならない。ついつい材木の仕上がりに目が向くが、削りくずにも技術の差は出る。くずと呼ぶのが失礼なほど美しい木片は、さまざまなことを教えてくれるお手本になった。

 身をもって知れ、そして進め。それが西岡の教え方だった。「数少ない一言に重みがあって、自分の中で百倍にもふくれた」。代を譲ったいま、前舎主という立場で仕事をしているが、同じように伝えていきたい、と願っている。

 「いま見ても、身構えてますよね、かんな自体が。今すぐ現場に行ってもいいって感じがしますね。苦しいとき、電気道具に頼れるような、オレらの世代にはこういう根性の入った道具というのは、なかなかないですよ」

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