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論文式試験出題の趣旨
採点実感等に関する意見

憲法学という視点からは,基礎的理解が不十分で,設問の具体的事情を離れて表現の自由に関する論証を記憶に従って並べただけの答案が多く,事案の内容に即した個別的・具体的検討の不十分さや応用力という点で課題を残すものであった。また,いわゆる論点主義の解答に陥っている答案が多く見られた。それらは,残念ながら,憲法の基礎理論を生きた知識として身に付けていない,また,法的思考力ないし論証力が十分に定着していない,と評価せざるを得ないものであった。

「弁護人の主張」「検察官の主張」として,とにかく対立する主張を書けばよいと考えているようなものが多く,設問の事案の問題点をそれぞれの角度から掘り下げていくという姿勢で書かれている答案は少なかった。

パターン化された答案が目につき,「型にはまった論述」が少なからず見られた。

関連する先例がきちんと挙げられて,検討されていない(本問では,岐阜県青少年保護育成条例事件判決,第三者所有物没収事件判決等)。このことは,それぞれの領域の重要判例を当該事案との関係でただ覚えているだけで,問題を本質的に理解していないことの現れであるように思われる。

問題の形式に応じて答える必要がある。問われているのは,弁護人,それに対して想定される検察官の主張と自説であり,まずは,弁護人の立場にたった論述が必要である。設問2で,検察官の主張又は自説の一方しか書いていないのは不十分であり,誰の見解を述べているのか判然としないものは不適切である。

訴訟の両当事者の主張を書かせている意味を理解することが必要である(立場の使い分けができてほしい。)。

抽象的な記載をするにとどまる答案は,主張の根拠に関する内容が乏しく,不十分である。

本来,「当てはめ」とは,具体的事例に合わせて抽象的な法理論を柔軟に具体化する作業を指す。しかし,答案で「当てはめ」として書かれていることを見ると,暗記している抽象的理論を絶対視していて,具体的事例にそのまま「当てはめ」れば自動的に解答が出てくるかのように誤解しているのではないかと思われる。その結果,具体的事例の個性が暗記してきた抽象的理論に収まらないときは,それ以上の思考を巡らせることなく,具体的事例の個性の方を切り捨ててしまうことになる。
新司法試験で測りたいと思っている重要な要素である個別的・具体的思考力は,そのような極めて形式的な「当てはめ」とは矛盾対立するものである。必要なのは,事案の内容に即した個別的・具体的な検討である。基礎的理解の確立と具体的な問題への対応の必要性について,受験生が再認識するよう求めたい。

本来主張してしかるべき点について十分な論述をしない一方で,その主張が判例及び主要な学説からして全く筋の通らない主張を展開する姿勢は,問題があるように思われる。

与えられた資料を精読せず,具体的な事案に即したきめ細かい対応がなされていない。例えば,資料で示された本問に特有の具体的な事情について全く触れていない答案が目立った。解答する上で,資料の活用は必須である。

資料の活用とは,資料に書かれていることを「書き写す」ことではない。ただ漫然と「書き写す」だけの答案は,不適切であり,不十分である。資料のどこの部分をどのように評価したのか,あるいは評価しなかったのか,きちんと説明されていなければならない。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20090202#1233577361