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『安岡正篤先生動情記』
P51

池田内閣の誕生以来、大平官房長官はしばしば先生を訪うようになる。案件のある時あり、何気なく訪う時あり、「今日も朝出がけだと言って寄ったが、何の用件らしきこともなかった。彼はなかなかの読書家だね」と先生語る。大平に対する先生の親近の情見ゆ。

P67

「この頃大平から何も言って来ないが、元気なのだろうね」と。大平正芳は先生には時に思い出す人であるらしい。

P106

大平幹事長に近い筆者の知人から、「大平は家を焼失したときに、先生の書物も同時に失ってしまった。何とかしてほしいと語っている」と聞き、先生の主だった本一揃いを用意して森田一秘書まで届ける。大平は感謝の意を表したいと森田一より伝言し、大平の一席の宴催される。田中内閣以来、久方ぶりに会った先生と大平の親しみの情、旧の如し。

P108

大平幹事長に招かれ、新橋の料亭で会談。さしたる用件はなく、「先生にお会いして話を聞くと何故か確信が湧く」と大平語る。

P117

帰京して、はしなくも大平総理の逝去が報じられる。先生暗然として「以て死すべくして而して生き、以て生くべくして而して死す、これを是有情というが、その妙趣がわかる人であった。惜しい人を喪ってしまった」と。