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大前 研一氏 「おまえもか!」と非難したくなる世界の経済対策

 2008年にノーベル経済学賞を受賞した米プリンストン大学クルーグマン教授は3月17日、ブリュッセルEU本部で記者会見した。彼は「欧米の財政刺激策は不十分で失望している」と述べ、EUや米国の景気対策を鋭く批判したのだが、彼の言わんとしているのは、主要国経済を回復させるためには需給ギャップを穴埋めするための追加的な財政出動が必要だということだ。

 これを聞いて、わたしは「クルーグマン、お前もか!」というせりふが口をついて出てしまった。彼は規模の景気対策だけでなんとかなると思っているのである。現在の不況の根本的な原因について分析をしていない。

 もう一つの「おまえもか!」は米FRBである。

 3月17日、米FRBは3月末に実施する予定だった銀行の持ち株会社自己資本率規制の厳格化を、2年間凍結すると発表した。一部の優先株自己資本への算入を制限する方針だったが、導入を2011年3月末に先送りするという。

現状に合わせてルールを変えようという動きである。かつて日本のBIS規制割れ、およびその臨機応変なルールの作り変えを批判した米国だが、なんのことはない、「米国よ、おまえもか!」である。

 実は英国でも同じような動きがあった。英国の金融監督当局FSA(Financial Services Authority)は、3月18日、銀行の健全性を保つための自己資本比率について、好況時には積みます一方、不況時に軽減することなどを柱とした改善策を英国政府に提言している。

自己資本の基準をカチッと決めるのではなく、海のブイのように、満潮のときはここまで上げて、干潮のときにはここまで下げる、という考え方で、いわば現実の好況・不況に合わせて調整していきましょうということだ。

米国の方は、基準はしっかり決めるが、その算出方法は緩くしておきましょうということである。