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大前研一 「わたしのマニフェスト」を一挙公開

 もう1つ、日本には非常に大きな安全保障・外交のカードがある。「日本経験の共有」である。戦後の著しい経済発展と経済的な富の蓄積が進んだ日本ならではの世界に対する貢献策として、国作りや人材作りにおいて戦後日本が成果を上げてきた一連の作業、すなわち“繁栄の方程式”を他の国々に移転してあげるのだ。


 日本はいま、経済的に停滞し長期不況にあると一般には信じられているが、人材以外にさして資源のない日本が戦後、世界第二の経済大国となり、国民1人あたりの所得でも世界のトップにあるということは、他の国から見れば羨望と尊敬の対象であり、その国家運営のノウハウは十分な価値を持つ。日本では、いまとなっては行き過ぎた中央集権・産業優先の弊害が出てきているが、これはすべての途上国が一度は通らなくてはければならない道である。


 「日本経験の共有」によって未開発国や途上国を真摯に助けることは、日本が単にそれをできるから、ということではなく、相手国から見れば、貧困や混迷の闇から抜け出す貴重な助けとなる。これによって日本は独特な仲間作りができると同時に、場合によってはその延長線上で自由貿易市場や共通通貨などEU型の模索を行うことも可能になる。


 この新しい形態の“援助”を評価してくれる世界中の国々との連帯、また、こうした経験の共有を提供できる立場にある諸国との協調関係、経済発展関係を積極的に促進して互いに経済繁栄を図り、それらの国々と安全保障条約や不可侵条約を結んで集団安全保障体制を確立していく。そういう「武力によらない経済発展の提供」を武器とした外交政策、従来の外交政策を180度転換した新しい発想――日本が世界の中で貢献できることを通じて外交基盤を作り上げていく、という発想――が、21世紀のポスト冷戦時代には必要となる。

 ここでの国の役割は、官僚が決めて全国に通達する“お上”の役割ではなく、「道州協議体」の“コーディネーター”としての役割である。その役割においても、過度のコーディネーションは避けなくてはいけない。

新しい税金は2つに簡素化する。

1つは道州レベルで産業基盤を確立して雇用を創出する目的のために徴収する「付加価値税」である。これは消費税とは異なり付加価値段階すべて、つまりすべての商行為に漏れなくかける。現在、日本の国民の総付加価値(GDP)は約500兆円強あるから、これに一律5%をかけると税収は25兆円になる。その代わり、法人税などの利益に対してかける税金は全部廃止する。

もう1つの税金は、コミュニティの安全で快適な社会基盤、生活基盤を作るための「資産課税」である。これは金融資産・固定資産の現在価値に対して毎年1%を課税する。相続税所得税は廃止する。

 今回6年を経てこの草案を公開することに決めた理由は、発表されたマニフェストを読んで自民党民主党も中心となるブレインがいないことを痛感したからである。マニフェストである以上はこの国をどうしたいのか、誰の立場に経って、何の問題をどう解決したいのか、という思想が一貫していなくてはいけない。予算の裏付けがあるかないか、などと言う批判は枝葉末端である。国民がやろうと思えば、予算は何とでもなる。そのための政策提言であり、選挙なのだ。またマニフェストはあらゆる人々に受け容れられるような癒しの言葉をちりばめてはいけない。少なくとも過去のどこに問題があり、政治はそれをどう変えようとしているのかを示さなくてはいけない。その意味では半数近い人々が反対しても、将来の日本にとって必要と思うことを述べなくてはいけない。いまの民主党みたいに発表して、反応を見ながら臨機応変に変えていくのは、哲学・思想がもともと欠落しているからである。

最強国家ニッポンの設計図

最強国家ニッポンの設計図

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20090810#1249854216
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20090801#1249102835
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20090809#1249779608
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20090803#1249248144
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20090803#1249248145
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20090808#1249683668