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記者の目:自らの手で状況変えよう=中村秀明(論説室)

 民主党は選挙戦終盤に大事なメッセージを発した。


 「あなた以外の誰が、この状況を変えられるのか」


 新聞各紙に掲載された広告の一文だ。この後、だから民主党に投票を、との訴えが続くのだが、本当は「だから何でも頼らず、まず自分でできることをやってください」ではないだろうか。

 今、日本を、住んでいる地域を少しでもよくするためにできることがある。


 年金制度の改革やムダ遣いの削減などでなく、隣人との関係をよくし、地域のつながりを取り戻すことだ。筋違いのとっぴな話に聞こえるかもしれないが、一人一人が日々のあいさつをきちんとすれば、世の中の閉塞(へいそく)感の40%くらいは取り払われていく。あと40%は、自分のためでなく、誰かのためにも何かをすることを心がければ、おそらく何とかなる。残りがたぶん、政治の役割なのだろう。


 人の力はそれほど大きいし、日本の問題の根っこは経済の低迷や官僚お得意の小難しい制度論議などではなく、子どもにもわかる、いや子どもならわかるような身近なところにある。そんな簡単なことが、何ともならないからこその閉塞感なのだろう。

 思えば日本と日本人は、国家と市場に重きを置いて、その力に頼りすぎていた。消費者や有権者というあてがわれた呼び名はあっても、国家や市場に向き合う「市民」という立場を築いてこなかったのではないか。時に抑えこみ、時に手を組み、常に監視すべきなのに、「その方が楽だから」と国家と市場に生活や未来を委ねてきたようだ。