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【正論】民主党政権発足に寄せて 宗教学者・山折哲雄

そんなときわずかに私の心に響いたのが、海部俊樹元首相の言葉だった。氏は戦い終わって引退を表明するとき、「生者必滅」といって力弱くうなだれたのである。無常の風が吹いたといって、唇をかみしめていたのだ。順風、逆風の逆風のことではない。順風、逆風のさらに上空を吹きわたっていた無常の風にふれていたのである。

民主党新政権の幹事長に小沢一郎さんが指名されて、舞台がにわかに活気づいてきた。

平安時代から江戸時代までの千年が和魂漢才、明治から敗戦までが和魂洋才で何とかしのいできた。近代日本の資本主義が、渋沢栄一のいう「論語ソロバン」主義でやっと根づいたことも忘れてはなるまい。西欧流の資本主義思想と儒教イデオロギーの折衷である。そもそも人間の生活には、経済と道徳の二門が必要だといったのが二宮尊徳だった。アダム・スミスマックス・ウェーバーが日本に輸入されるはるか以前のことだ。

日本列島の文明は、外から入ってくる異質なものをきちんと選別し、身の丈に合った形で受容することに知恵をしぼってきたのである。ところが、そのような覚悟をうながす「成田屋…」の声は観客席のどこからもあがらなかった。

現在、われわれの国土で進行する政治ドラマがいささか物足りなく薄手に映るのは、歴史を回顧する気配が役者たちにも観客の側にもあまりみられないからではないだろうか。

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